2017. 12. 19  
 しびれはだれしもが経験する不快な感覚です。正座で生じるしびれは足を崩せば容易に改善しますが、医療機関での専門的な加療を要するしびれもあります。一般的にしびれに対する危機感が患者側にも医療従事者側にも薄いような気がします。しびれは神経の悲鳴と解釈しております。神経に圧迫や緊張が加わるとしびれが生じます。神経の悲鳴であるしびれを放置すると神経の障害が進行し、感覚が鈍くなったり、力は入らなくなったり、最悪、回復が望めないことさえもあります。

 しびれは求心性のインパルスで脳がしびれを感じますが、同様に痛みも求心性にインパルスが走り脳が痛みを感じます。
 痛みは、健常者にも備わった感覚であり生体防御として重要な感覚でもありますが、しびれは健常者には存在しない感覚であり、神経の障害により生ずる異常な感覚です。

 このようなしびれを愁訴として来院してきた患者と先ず始めに行うことは、しびれの意味を確認することです。
 一般の方は運動系と感覚系の症状をしびれと称して訴えてきます。
 運動系では、筋力低下(力が入りにくい)、振戦(震え)、こわばり感など、感覚系では、感覚鈍麻(1枚皮をかぶった感じ)(感覚が鈍い)、異常感覚(ジンジン)(ビリビリ)(チリチリ)(ピリピリ)(触れると嫌な感じ)と訴えられます。
 しびれは感覚系の症状であることを再確認する必要があります。

 しびれは感覚伝導路の障害により生じ、原因としては神経圧迫,循環障害,心因性要因があげられます。
 心因性要因は、ある施設によってはしびれを訴える患者の4割程度という報告もあります。「器質的病態が見当たらず、むしろ精神的要因と考えられる」と記されておりますが、このような患者の疾病利得を推測すると、評価側の私が欠落している診方があるように思えてなりません。とにかく安易に判断するのではなく慎重さが求められます。

 末梢神経障害では刺激症状であるしびれの他に感覚障害や筋力低下、筋萎縮など脱落症状も評価します。
 刺激症状の強さは神経障害の進行度とは無関係であり、脱落症状は神経障害の進行とともに増大します。その点を理解して評価する必要があります。

 しびれの訴えは自己申告であり具体的な数値で測定することはできません。
 患者のしびれの範囲、しびれの強さ、しびれのオンとオフを聴取し、しびれの程度を可能な限り共感できるように努める必要があると思います。
 また、しびれが誘発される動作や姿勢はしびれの病態を知るうえで必要であり生活指導にも使えます。
 反対にしびれが緩解される姿勢ではそれ自体がセラピィのヒントになりますので、誘発と緩解を理解することは末梢神経障害の評価と治療にとって欠かすことが出来ない手技であると思います。

 本日、新宿の朝日カルチャーセンターで「しびれは神経の悲鳴―手のしびれの対処法―」について話して来た内容を簡潔にまとめ加筆したものです。
2017. 12. 01  
 当院にてスプリント療法を導入すべく現在リハビリ科内で話し合いをしています.

 そこで今問題になっているのが「スプリントをOTが作る必要性についての文献や科学的根拠」を求められていることです..

 装具やスプリントの効果自体は認められ,OTが作る方が迅速かつそのつどヒートガンなどで修正ができる点が優れており,屈筋健損傷後のクライナート療法もOTが作ればすぐ対応できることを説明しているのですが,
 
 周囲からは「屈筋腱損傷後のクライナート療法も術後すぐOTが作るのではなく義肢装具士に頼めばいいのではないか?あたりなどのリスクもあり,わざわざOTがリスクをおう必要はあるのか?」「当院では義肢装具士の装具完成まで1週間かかるが,1週間おくれてからクライナートするのではなぜいけないのか?」「確かにOTが作ればすぐクライナート療法ができるが,1週間おくと予後が悪くなるなどの文献はあるのか?」という意見があります.

 私自身クライナートなどの文献を検索はしているのですが,なかなか的を得たものが見つけられず,スプリント導入がやや足踏みしている状態です・・・

 ご経験豊富な先生の知見がお借りできればと思い,相談させて頂きました.

 なにかスプリントをOTが作る必要性や効果について,義肢装具士と差別化できるような文献や早急なクライナート療法が必要であるなどのスプリントの効果を示す科学的根拠をご存じでないでしょうか?

 お忙しい中大変恐縮ではございますが,何卒よろしくお願い申し上げます.




 ご質問ありがとうございます。

 臨床でスプリント療法を実践していないとスプリント療法の重要性は理解されないと思います。卒前教育での机上での学習、学生間でのスプリント作製程度では難しいのかもしれません。

 文献を提示して話しを進めようとされておりますが、スプリント療法は医師からの処方が前提となりますので、手外科医から処方を出してもらえれば早いのではないでしょうか。

 そう言っても、やはり理解して頂かなくてはならないので、braceとsplintの違いから義肢装具士と差別化を考えて下さい。

 braceは、作りがしっかりしていますので耐久性に優れております。作製するには技術を要し、作製に時間を要することは否めません。外注の場合には、納品に大体1週間を要するものと思われます。

 splintは、セラピィの一環としてのスプリント療法があり、作業療法士によって作製されます。スプリント療法には目的があり、しかも病態の変化に適合された内容でなければなりません。

 作製時間にはダイナミックスプリントで1時間前後を要しますが、その場で納品することが出来ます。修正や修理も容易に可能です。作製は容易ですが耐久性に欠けてしまいます。素材が劣化する前には治療が終了するため問題にはならないと思います。

 手外科という臨床場面では、安静の保持、運動制限、可動域の拡大、骨折の固定など、スプリント療法へのニーズは多々あります。また、症例によっては即時装着が望まれます。
 浮腫による手の容積変化、可動域の変化、腱の癒着化、軟部組織の炎症など、病態の変化がある中で、即時装着を前提としたスプリント作製、病態変化への即時対応を考慮すれば、担当のセラピストがスプリントを作製することに疑問を持つことはないと思います。
 外傷や手術後であれば、組織が癒着、線維化する前に、目的にかなったスプリントを早期に作製し装着しなければならず、納品に1週間待つということは自ら改善の機会を失するというものです。

 義肢装具士と作業療法士の決定的な相違は、直接治療を施しているか否かであり、流動的な治療にスプリント療法がスムースに取り入れられるかが大切だと思います。

 厳しいようですが、スプリントを作製できない作業療法士は、手外科のセラピストとしては大きなスキルの欠損になるものと私は思います。

 スプリント療法の導入を頑張って下さい。
2017. 11. 03  
 音楽を職業にしている方、音楽家を目指している学生、セミプロとして演奏している方、趣味で演奏している方など、楽器演奏を日常的に行っている方の手の障害を診る機会が多々あります。
 最も多いのが狭窄性腱鞘炎で、次に胸郭出口症候群です。ジストニアは稀な疾患であり難治性であるため、今後、研究の対象となる疾患です。

 私がこれまでにセラピィを施してきた音楽家と疾患です。
 ギター演奏家の腱鞘炎、胸郭出口症候群。
 バイオリン演奏家のデケルバン病、胸郭出口症候群、肩凝り。
 ドラム演奏家の腱鞘炎、胸郭出口症候群、ジストニア。
 クラリネット演奏家のデケルバン病、手根管症候群。
 トランペット演奏家の胸郭出口症候群。
 ピアノ演奏家の腱鞘炎、デケルバン病、手根管症候群、胸郭出口症候群、ジストニア、腰痛、肩凝り。
 和太鼓演奏家の腱鞘炎。
 演奏家によっては複数の診断が被っていることもあり、全てにおいて介入が要求されます。

 腱鞘炎では、手指の痛み、こわばり、関節の可動域の制限を訴えます。腱鞘炎に合併しやすい手根管症候群も見受けられます。

 胸郭出口症候群では、腕の痛みとしびれ、脱力感、頚部や背部の痛み、肩凝り、めまいや耳鳴りなどの自律神経障害で、演奏自体が出来なく日常生活にも支障が生じる方もおられます。

 手、特に指に限定的に生じるジストニアなのでフォーカル・ジストニアと呼び全身的に生じるジストニアと区別しております。意思に反して指が曲がってしまい意図する演奏が困難となります。


 私が診ている音楽家の方々で共通して言えることは、“身体作り”をしていないということ。演奏前後のメンテナンスをしていないということです。していないというより“するという発想”がありませんでした。

 音楽家の方々には、“自分はアスリートである”という認識がないようです。

 楽器を演奏するための特異的な姿勢、体幹と肩甲帯、頚部の長時間の固定、繰り返される手指の運動。そして、毎日の長時間の練習。まさしく、アスリートとしての身体機能が要求されます。しかしながら意識してトレーニングをされている方は皆無でした。運動習慣がありません。
 演奏を指導される方や学生の方に尋ねるとメンテナンスの方法を卒前、卒後に学ぶ機会は皆無だったとのこと。そういう発想がないとの事。

 アスリート達はどうしているでしょうか?
 ウォーミングアップとクールダウン。
 基礎運動を継続的に行っています。筋力強化と柔軟運動。食事に対する配慮もなされております。

 音楽の学生では期末試験、卒業試験、入学試験のため課題曲を毎日長時間練習する必要があります。体に痛みがあっても試験をパスするために無理してしまいます。

 プロでは、リサイタルやコンサートに向けての長時間に及ぶ猛練習。やはりここでも無理してしまいます。

 無理とは、強行する、頑張りすぎる、オーバーワークする、限界以上に働くということです。身体に負担がかかるということは容易に理解できると思います。

 指を繰り返し運動することにより腱と腱鞘間でのしごきが増大して炎症が生じてしまいます。
 楽器の保持での肩や頚、楽器によっては限局した指に負担がかかり肩凝り、頚肩の筋の過緊張、腱鞘炎、関節痛が生じてしまいます。

 胸郭出口症候群では、特異的な同姿勢で長時間延長することは筋の緊張を強めます。これが習慣的になることにより、腕神経叢に圧がかかり症状が誘発されるようになります。

 医療機関に勤めていると発症してからの介入となりますが、やはり、予防が大切です。
 難しいことはないと思います。体育の授業を思いだしてください。体を育む授業です。
 柔軟運動やランニング、基礎的な筋力運動、ラジオ体操、水泳など。やれることから初めてみては如何でしょうか。
2017. 10. 07  
 おはようございます。
 先生のfacebookを拝見し、勉強させて頂いております。

 今年の○月から、急性期病院で働いており術後の整形疾患の方を担当する機会が増えました。これまで働いていた病院は回復期から維持期にあたる患者様が多く、上肢においては術後直ぐの方をみることがありませんでした。
 このため、複数の書籍を見たり、先輩方にも質問しながら知識を深めているつもりではいるのですが、分からないことも多く先生に連絡させて頂きました。お忙しい中、大変申し訳ありません。


 骨折に対する術後リハにおいて、先輩方からは自動運動から始めた方が良いと教えて頂くのですが、書籍をみると自動運動から開始しないといけないものや、他動運動から開始しないといけないものなど、なにが正しいのか分からず自分が患者様に不利益な治療をしてしまっているのではないかと不安でたまりません。
 術式により変わるのか、その違いをどう考えれば良いのかわからずご教示頂けないでしょうか。

 現在は○○骨折に対する観血的固定術後の方をみており、主治医に確認した際に運動制限はなく動かしていくよう指示を受け、自動運動から開始しておりました。なかなか挙上範囲が拡大せず、既に三週が経過しております。○○先生の書籍には他動運動から開始した症例があったことや、2日前のカルテに近位骨端の○転位と記載されていました。自動運動から開始したことがいけなかったのではないかと思い、今後の治療の留意点をどのように考え進めたら良いかご教示頂けないでしょうか。

 また、ハンドセラピーの勉強会に参加していこうと考えておりますが、参考とすべき書籍などありましたら教えて頂きたく、よろしくお願い致します。
 長文となり、申し訳ありません。




 ご質問、ありがとうございます。

 患者のために尽くすことは、最終的には尽くした自分の知識やスキルとなります。思い存分に悩んでください。打開策は必ずあります。

 観血的整復固定した症例ですね。
 
 そもそも、骨折の治療とはなんでしょうか?

 整復と固定、後療法ですね。

 後療法は術後の合併症対策です。
 外傷や手術により生ずる合併症は共通な点もありますが損傷組織固有の内容もあります。骨折であれば、骨の再転位、偽関節や遷延治癒などの病的骨癒合に関わる問題、関節可動域の制限、腱の癒着などの修復過程で生ずる合併症などがあります。

 医師からの指示に従ったリハビリで転位が生じてしまったのではないかと悩まれておりますが、ご自身はレントゲンや手術記録からどのような情報を得ていたのでしょうか。

 何でもかんでも医師の指示を仰ぐセラピストがおられますが、セラピスト自身は何をすべきか先ずは自分の頭で考える習慣を身に付けて下さい。
 全ての医師が具体的な後療法に精通しているとは限りません。だから、私達セラピストが専門職として必要とされているのだと思います。

 その専門職のセラピストが、自動運動をすべきか他動運動をすべきか、答えを見つけ出そうと文献を読んでいるようですが、後療法は外傷や手術内容により異なります。他施設の後療法をコピペするのではなく参考程度にして下さい。
 職場の先輩方はこれまでの医師との交流で自動運動と指導されたと思います。自動運動になった経緯を教授願ってみては如何でしょうか。


 で、もう一度、考えてみましょう。骨折の治療は何でしょうか?

 徒手的にまたは手術的に整復し、その整復位をしっかりと固定する。
 固定力が安定し運動に耐えられる強度であれば骨癒合が得られる前から運動を開始する。

 リハビリが処方される前に“整復”と“固定”が完了しているわけですから、整復不良や固定不足はリハビリの適応外と見なされます。固定が不良ですと偽関節や遷延治癒という病的な状態ですので、骨折部直近の関節運動は中止すべきですし再固定(強固な固定と骨移植)を検討する必要があります。

 リハビリは、術後に生ずるであろう機能障害に対し予防策を図り、生じてしまった機能障害にはリスクを理解した上での機能改善を図ります。

 こんな話がありました。
 ある学会主催の教育研修会で、ある講師が手指の可動域の拡大は自動運動で行わなければ関節を壊すとして他動運動を否定すると力説しておりましたが、その施設のセラピストは可動域の拡大は他動運動で行っておりました。これに対する説明は省きます。

 自動なのか他動なのかを悩むのではなく、自動(他動)運動を行う理由がありますのでその点を考えて下さい。マニュアル的な論文を探すのでなく解剖や病態、術式、創傷治癒などの知識を修得することにより後療法内容を自分で考察できるようになります。
 
 参考書籍はたくさんありますが、石黒隆先生が共著している「整形外科プライマリケア ハンドブック」は一読していた方がいいと思います。

 情報が限定的ですので具体的な症例指導は出来ませんが、答え探しでなく、自分で考察できるように文献を読んでみて下さい。若い時に年間3ケタの数の論文は読まないと一人前にはなりません。
2017. 10. 05  
 痺れについて

 こんにちは。HP見させていただいており、参考にさせていただいています。
 今回は相談があります。

 手関節より遠位5cmあたりでの正中神経切断、縫合術後半年の方です。tinel徴候は切断部より変化ありません。痺れが正中神経領域全般に強く残り、金属や凹凸、振動に対し強い不快感が残存しています。このようなしびれや不快感を軽減するセラピィはありますか。主婦の方で料理や裁縫時に苦労されています。現時点では道具の素材変更などの対処法指導となっております。また、主治医よりリリカ処方となっていますが、効果は疑問があります。

 急な質問で申し訳ありませんが、アドバイスいただければと思います。よろしくお願いいたします。



 ご訪問ありがとうございます。

 正中神経切断で神経縫合後半年経過した症例ですね。
 約180日経過ということは、Tinel signは180㎜末梢に移動していなければなりませんが、切断部にあるということです。

 断裂した部位はMixed nerveですので、運動神経と知覚神経の機能障害がどれ位か評価する必要があります。

 物事を進めていく上で重要なのが“第3者が理解できる客観的な評価”です。

 正中神経の断裂、神経縫合、180日経過という情報は得られておりますから、軸索が末梢に伸びて機能しているかどうかを評価する必要があります。

 Tinel signは知覚神経の軸索の再生を診る誘発検査です。再生していれば手掌から指の範囲に認められなければなりません。
 運動機能は短母指外転筋のMMTを測定します。予測としてはMMTで1から2-くらいですか。
 知覚機能はSWTを測定します。予測としては正中神経支配の手掌で「防御知覚脱失」になっていると思います。

 揃えられる資料を持って主治医に相談してみて下さい。
 神経の再断裂はありえないお思いますので、恐らく神経腫が形成されていて腱や周囲組織に癒着しているのだと思います。
 CRPSⅡの症例ではこのような例を認めることがあります。

 運動と知覚機能障害によっては、神経剥離または神経移植が必要になります。

 早めに対応して方向性を決めていく必要があると思います。
HAND maintenance studio
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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