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2018. 03. 18  
 平素大変お世話になっております。
 先日は勉強会でのご指導ありがとうございました。
 クリニック勤務ということもあり腱鞘炎等アイシング、ストレッチ指導が重要な患者様が多くいらっしゃるため、先生のご講義はすぐ臨床に生かせ大変勉強になりました。ありがとうございました。

 現在母指MP関節症の方を担当しており難渋し悩んでおり先生にご連絡させていただきました。
 〇代、〇性、長年MP関節痛があり〇回もMP関節に注射を他院で行っていたようです。
 当院に来てくださった際の訴えは仕事が〇〇で書字が困難、母指IP関節を屈曲するとMP関節の背橈側が痛む、というものが主訴です。
 書字の際母指IP関節の屈曲が強い印象です。
 第一背側骨間筋の萎縮が見られます。
 母指の解剖学的なところ、運動学的なところ、MP関節が変形する機序、書字が痛みなく行うにはどのようなアプローチが良いか、等それぞれ私の知識不足があり文献を探していますがあまりよくみつけられていません。

 文献や本等おすすめのものはありますでしょうか?
 またスプリントやアプローチ方法のアドバイスいただけたら

 是非お願いしたいと思っております。
 お忙しいところ申し訳ありませんが、どうぞご指導よろしくお願いいたします。




 ご質問ありがとうございます。
 セミナーでは遠路からのご参加、お疲れ様でした。臨床で効果を確認して頂き嬉しく思います。
 懇親会に参加されなかったことは残念でした。機会がありましたら、よろしくお願いいたします。


 さて、ご質問の内容です。

 
 母指MP関節の関節症で関節内注射の効果なし。
 IP関節屈曲でMP関節の橈背側に痛みがあり、その痛みによる書字困難。
 第一背側骨間筋に筋萎縮を認める。

 母指のMP関節の関節症ですので、画像からは何が読み取れますか?
 関節可動域が分かりませんが、関節症ですので除痛を図るのなら関節の固定が必要に思います。関節の変形次第でしょうが注射の効果がないので、観血的治療の適応かもしれません。
 つまみ動作では橈屈を強いられますので人工関節よりは関節固定が確実だと思いますが、その前に、サムスパイカでMP関節を固定し除痛効果を確認してみて下さい。気持ち尺屈位で。

 第一背側骨間筋の筋萎縮があるようですが、特にしびれや知覚障害の記載がないのでギオン管症候群が疑われます。
 IP関節の屈曲が強い印象はFromentサイン陽性、つまり母指内転筋の筋力低下により長母指屈筋にて母指内転を代償しているのではないでしょうか。尺骨神経の評価も必要です。
 ギオン管症候群でも感覚神経の障害を呈する場合がありますので、手背側の背側枝の評価もしておいて下さい。破格で後骨間神経が手背尺側を支配する例もありますので、早合点しないようにして下さい。
 セミナーの末梢神経のところで話しておりますので復習して下さい。

 尺骨神経障害のFromentサインを呈している母指に対して長母指屈筋を過度に収縮しないでつまみ動作の練習をするとFromentサインが消失するという報告がありました。
 内容的には骨間筋の筋萎縮が著明ですし、尺骨神経の前方移動後半年ほどの経過だったと思います。
 演者に確認しましたが軸索の再生とそれによる筋力の改善ではないということでしたので、おそらく正中神経支配の短母指屈筋と橈骨神経支配の長母指伸筋とのバランスの結果だと思います。
 これがヒントです。

 ”その後”のご報告をお待ちしております。
2018. 02. 12  
 セラピィの終了間近で何をすべきか?

 腱鞘炎の再発で来院される患者がおります。
 通院時には、自己管理法としての手のアイシング、腱鞘のストレッチを理解し自己管理ができ、症状が緩解したためにセラピィを終了となっておりました。しかしながら、時間と共に自己管理を怠り、複数指の腱鞘炎発症での来院となりました。

 腱鞘炎の多くは手の過使用による発症であり生活習慣病と捉えても間違いないと思います。ですから、日々のメンテナンスが必要になります。

 疫学的にも腱鞘炎になった方は再発しやすく他指にも発症されると報告され、再発防止についての患者指導を行わなくてはなりません。


 私自身、17年前に腱鞘炎で両手の示指と中指の腱鞘を切開しております。未だに、手のこわばり感や熱感が生ずる時があります。手の使用過多で生じますので、腱鞘のストレッチとアイシングは欠かせません。

 後遺症として、腱の浮き上がりから来る腱鞘部の違和感や内在筋プラス肢位を持続したあとの指屈曲困難が生ずることです。このような後遺症は稀だと思いますが出来ることなら手術でなくセラピィで治せるものは治したいと考えております。
 17年間継続した腱鞘のストレッチとアイシングで持ちこたえている感があります。これからも継続していかなければなりません。

 再発例は腱鞘炎ばかりではありません。
 手根管症候群や胸郭出口症候群も再発することがあります。炎症疾患や絞扼性神経障害は再発しないとは断言できませんので、再発を前提に対応することが必要です。

 医療機関に勤務していると予防的なセラピィは出来ませんが再発予防はできます。
 腰痛の治療で著明なマッケンジーは、腰痛は再発するので予防策を指導することが大切だと述べております。

 最終的には患者の自己管理となりますが、自己管理の意味を理解し実行出来れば再発率は下がるものと思います。

 再発予防のための自己管理を継続して行ってもらうためには、簡単な内容で、効果を感じる内容でなければなりません。とても大切なことだと思います。
2018. 01. 01  
 「夜、寝れてますか?」

 神経内科系のテキストには、末梢神経障害の症状を“刺激症状”と“欠落症状”とに分けて論じております。とても理解しやすい分け方だと思います。
 整形外科系ではこのような記載はなかったように思います。

 刺激症状は、神経性疼痛、しびれ、脱力感など、
 欠落症状は、筋力低下、筋萎縮、感覚障害などです。

 欠落症状は自覚症状ばかりでなく他覚所見としても観ることができますが、刺激症状は他覚所見が得られにくく自己申告に頼らざるを得なく第3者からの症状認定が困難なものです。
 ですから、この刺激症状に対しては真摯に対応しなければなりません。「経過観察」は慎重にしなければなりません。

 この刺激症状である神経性疼痛は、腱鞘炎やTFCC損傷では運動時痛とは異なり、安静痛をも発します。
 その安静時痛により多くの方々は睡眠が妨げられてしまいます。
 長期間の睡眠障害を想像してみて下さい。
 本人もつらいでしょうが家族も大変な苦労を強いることにもなります。
 ですから、神経疾患の方には「夜は寝れてますか?」と先ず始めに尋ねます。

 (症状)誘発検査と緩解検査から誘発の特性を探り、安楽な肢位を探し出すことを先ず行わなければなりません。

 確定が出来なければ“疑い”でもいいと思います。
 セラピィの効果、姿勢指導の効果、就寝肢位の指導の効果など、効果確認が大切です。

 このように刺激症状で苦しい思いをする方々を診ていると、発症する前の予防が必要と考えます。
 病院勤務では無理な話です。
 飛び出さなければならないかもしれません。


 深大寺の除夜の鐘が聞こえてきました。
 年が明けたようです。

 2017年と締めくくりと思っておりましたが、新年のごあいさつとなってしまいました。

 明けましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いします。
2017. 12. 19  
 しびれはだれしもが経験する不快な感覚です。正座で生じるしびれは足を崩せば容易に改善しますが、医療機関での専門的な加療を要するしびれもあります。一般的にしびれに対する危機感が患者側にも医療従事者側にも薄いような気がします。しびれは神経の悲鳴と解釈しております。神経に圧迫や緊張が加わるとしびれが生じます。神経の悲鳴であるしびれを放置すると神経の障害が進行し、感覚が鈍くなったり、力は入らなくなったり、最悪、回復が望めないことさえもあります。

 しびれは求心性のインパルスで脳がしびれを感じますが、同様に痛みも求心性にインパルスが走り脳が痛みを感じます。
 痛みは、健常者にも備わった感覚であり生体防御として重要な感覚でもありますが、しびれは健常者には存在しない感覚であり、神経の障害により生ずる異常な感覚です。

 このようなしびれを愁訴として来院してきた患者と先ず始めに行うことは、しびれの意味を確認することです。
 一般の方は運動系と感覚系の症状をしびれと称して訴えてきます。
 運動系では、筋力低下(力が入りにくい)、振戦(震え)、こわばり感など、感覚系では、感覚鈍麻(1枚皮をかぶった感じ)(感覚が鈍い)、異常感覚(ジンジン)(ビリビリ)(チリチリ)(ピリピリ)(触れると嫌な感じ)と訴えられます。
 しびれは感覚系の症状であることを再確認する必要があります。

 しびれは感覚伝導路の障害により生じ、原因としては神経圧迫,循環障害,心因性要因があげられます。
 心因性要因は、ある施設によってはしびれを訴える患者の4割程度という報告もあります。「器質的病態が見当たらず、むしろ精神的要因と考えられる」と記されておりますが、このような患者の疾病利得を推測すると、評価側の私が欠落している診方があるように思えてなりません。とにかく安易に判断するのではなく慎重さが求められます。

 末梢神経障害では刺激症状であるしびれの他に感覚障害や筋力低下、筋萎縮など脱落症状も評価します。
 刺激症状の強さは神経障害の進行度とは無関係であり、脱落症状は神経障害の進行とともに増大します。その点を理解して評価する必要があります。

 しびれの訴えは自己申告であり具体的な数値で測定することはできません。
 患者のしびれの範囲、しびれの強さ、しびれのオンとオフを聴取し、しびれの程度を可能な限り共感できるように努める必要があると思います。
 また、しびれが誘発される動作や姿勢はしびれの病態を知るうえで必要であり生活指導にも使えます。
 反対にしびれが緩解される姿勢ではそれ自体がセラピィのヒントになりますので、誘発と緩解を理解することは末梢神経障害の評価と治療にとって欠かすことが出来ない手技であると思います。

 本日、新宿の朝日カルチャーセンターで「しびれは神経の悲鳴―手のしびれの対処法―」について話して来た内容を簡潔にまとめ加筆したものです。
2017. 12. 01  
 当院にてスプリント療法を導入すべく現在リハビリ科内で話し合いをしています.

 そこで今問題になっているのが「スプリントをOTが作る必要性についての文献や科学的根拠」を求められていることです..

 装具やスプリントの効果自体は認められ,OTが作る方が迅速かつそのつどヒートガンなどで修正ができる点が優れており,屈筋健損傷後のクライナート療法もOTが作ればすぐ対応できることを説明しているのですが,
 
 周囲からは「屈筋腱損傷後のクライナート療法も術後すぐOTが作るのではなく義肢装具士に頼めばいいのではないか?あたりなどのリスクもあり,わざわざOTがリスクをおう必要はあるのか?」「当院では義肢装具士の装具完成まで1週間かかるが,1週間おくれてからクライナートするのではなぜいけないのか?」「確かにOTが作ればすぐクライナート療法ができるが,1週間おくと予後が悪くなるなどの文献はあるのか?」という意見があります.

 私自身クライナートなどの文献を検索はしているのですが,なかなか的を得たものが見つけられず,スプリント導入がやや足踏みしている状態です・・・

 ご経験豊富な先生の知見がお借りできればと思い,相談させて頂きました.

 なにかスプリントをOTが作る必要性や効果について,義肢装具士と差別化できるような文献や早急なクライナート療法が必要であるなどのスプリントの効果を示す科学的根拠をご存じでないでしょうか?

 お忙しい中大変恐縮ではございますが,何卒よろしくお願い申し上げます.




 ご質問ありがとうございます。

 臨床でスプリント療法を実践していないとスプリント療法の重要性は理解されないと思います。卒前教育での机上での学習、学生間でのスプリント作製程度では難しいのかもしれません。

 文献を提示して話しを進めようとされておりますが、スプリント療法は医師からの処方が前提となりますので、手外科医から処方を出してもらえれば早いのではないでしょうか。

 そう言っても、やはり理解して頂かなくてはならないので、braceとsplintの違いから義肢装具士と差別化を考えて下さい。

 braceは、作りがしっかりしていますので耐久性に優れております。作製するには技術を要し、作製に時間を要することは否めません。外注の場合には、納品に大体1週間を要するものと思われます。

 splintは、セラピィの一環としてのスプリント療法があり、作業療法士によって作製されます。スプリント療法には目的があり、しかも病態の変化に適合された内容でなければなりません。

 作製時間にはダイナミックスプリントで1時間前後を要しますが、その場で納品することが出来ます。修正や修理も容易に可能です。作製は容易ですが耐久性に欠けてしまいます。素材が劣化する前には治療が終了するため問題にはならないと思います。

 手外科という臨床場面では、安静の保持、運動制限、可動域の拡大、骨折の固定など、スプリント療法へのニーズは多々あります。また、症例によっては即時装着が望まれます。
 浮腫による手の容積変化、可動域の変化、腱の癒着化、軟部組織の炎症など、病態の変化がある中で、即時装着を前提としたスプリント作製、病態変化への即時対応を考慮すれば、担当のセラピストがスプリントを作製することに疑問を持つことはないと思います。
 外傷や手術後であれば、組織が癒着、線維化する前に、目的にかなったスプリントを早期に作製し装着しなければならず、納品に1週間待つということは自ら改善の機会を失するというものです。

 義肢装具士と作業療法士の決定的な相違は、直接治療を施しているか否かであり、流動的な治療にスプリント療法がスムースに取り入れられるかが大切だと思います。

 厳しいようですが、スプリントを作製できない作業療法士は、手外科のセラピストとしては大きなスキルの欠損になるものと私は思います。

 スプリント療法の導入を頑張って下さい。
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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