2017. 08. 07  
 腱縫合後の後療法を担当するものにとって、“指が曲がらなくなった”、“力が入らない”、“グズッとした”“ブチッとした”など、再断裂を思わせる訴えにはつい敏感になってしまいます。
 腱癒着を前提としたら腱断裂はゼロでしょうが、腱滑走の獲得を前提としたら再断裂はゼロにはなりません。しかし、ゼロに近づけることはできます。
 
 腱損傷ばかりではありませんが、患者と医師、セラピストのコラボレーションが大切です。

 強い腱縫合、適度な緊張度、腱鞘の処置、縫合腱のスムースな腱鞘通過。
 手術合併症対策、縫合腱減張位の理解と減張位でのROM運動の実施、腱滑走運動、適切なスプリントの作製と装着、患者教育。
 自己管理の理解、自主トレの実施。
 
 自宅で再断裂すると患者の自己管理の悪さが指摘され、リハビリ中ではセラピストの注意不足が指摘されます。でも、縫合しリハを処方したのは医師です。
 だれの責任ではなく再断裂した原因を検討しなければなりません。
 一番ショックなのは患者さんです。痛い思いするのも患者さん。振り回されるのも患者さん。
 
 再断裂の可能性はどこにあるのか?
 他組織損傷がないとして考えてみましょう。

 腱縫合法:早期運動療法の適応とならない腱縫合法。

 腱縫合部:縫合部が膨瘤し腱鞘を通過することが出来なければ屈曲不全となります。浮腫が消褪することにより通過するケースもあるため無理に通過させようとせず、屈曲不全となる狭い範囲の滑走を維持し抗張力が増してから滑走拡大を図る。

 スプリント療法:静的な背側スプリントは縫合腱に過度な緊張が加わらないようにするのが目的。的確な伸展ブロックで過度な緊張を回避する。
 術後5から6週で作製する動的スプリントで縫合部への過度な伸長が加わらないか。一方向への滑走がストレッチにならないように固定肢位を考慮する。
 スプリント装着下での前腕の回内外や手関節の運動をする例があり、スプリントがずれての固定肢位の変化や痛みの原因となるため、スプリント装着に関する装着指導がなされるべきである。
スプリントを外しての手の使用制限、更衣動作への教育がなされているか。圧迫による痛みで外してしまい例があるため、作製後は細かく装着感に関して確認する。
 スプリントを勝手にカットしたり成形したりするケースを過去に経験しているので要注意。

 夜間時の固定肢位:不意に屈曲した際の過緊張対策がなされているか。

 浮腫や腫脹への配慮不足:浮腫、腫脹は可動域制限に関与するため、自動運動で過度な緊張が加わる可能性がある。冬季に凍えた手を急激に温め血管拡張による腫脹により可動域の制限増もあるため要注意。

 減張位の理解不足:単関節の運動の際にその運動が縫合腱に緊張が加わるものであれば、隣接関節の肢位により減張を図る必要があります。しかし、既に腱に癒着が生じてしまった場合、定型的な減張位が減張位とならない場合があります。減張位が有効な癒着は腱固定効果陽性の場合であって陰性では縫合部に過度な緊張が入ります。

 患者指導:腱や腱縫合に関しての知識は皆無なので、医療従事者の常識を期待することは出来ません。患者さんが理解できるように十分に説明する。想定外のことをするケースがあるため、これまでの事例も含め説明していく。十分に説明しても理解できないケースは、早期運動療法の適応ではなく固定法を選択すべきである。
 スプリントの装着の意義、していい運動としていけない運動の説明。

 早期に癒着が生じてしまったら、抗張力が高まってから持続的に緊張を加え癒着をルーズにし、早急に過度な緊張を加えることは再断裂のリスクを高めてしまいます。

 腱縫合状態、腱周囲の状態、患者の理解度、セラピストの技量により、腱縫合後の腱滑走の再獲得が左右されます。既存の文献の模倣でなく、その意味合いを理解して対応する必要があります。
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阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
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