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2016. 09. 29  
 件名:手根管症候群・腱鞘炎術後補足
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 迅速に対応いただきありがとうございます。

 検討事項の補足ですが、他医手術に関する事項は、諸事情により確認が取れません。

 確認点に関しましては、

 ○手根管症候群との診断は確かなのか? 診断の根拠と鑑別診断

 対象者本人の情報からは、確かに正中神経支配領域の手掌と指末梢にしびれがあり、特に夜間痛がひどかったこと、親指が特に動きにくかった、こと、現時点の評価ですが胸郭出口症候群の鑑別テストは陰性(モーリー・アドソン・ライトテスト)、円回内症候群の誘発テストも陰性、ということで、手根管症候群もしくは腱鞘炎からくる手根管症候群様症状と考察しています。


 ○手根管開放術は的確なものなのか?効果的なものなのか?

 ここに関しては詳細な情報と知識を持ち合わせていませんが、本人様の情報から、術後は1ヶ月以上激しい痛みと腫脹が続きほとんど動かせなかったこと、そこから癒着などの進行は予想でき、その状態で指のしびれや運動制限、腫脹も軽減しないため、半年以上経って腱鞘炎に対する切開術を実施したことろ、しびれと腫脹は劇的に改善したが(むきには現在も軽度あります)、運動制限と可動域制限は残存している状況です。


 ○手根管症候群の病状は? 短母指外転筋のMMTは? 正中神経領域の感覚障害の有無は?

 フィラメント等を用いた詳細な感覚検査は行なえませんが、著明な感覚障害は認められず、痺れなどの異常感覚はありません。短母指外転筋のMMTは2、他動可動域は橈側外転が40°、自動運動域は30°で若干ラグがあります。


○術後の後遺症として、関節可動域制限、屈筋腱滑走制限、正中神経滑走制限の有無は?

 制限は上述の橈側外転制限と、母指IP関節の他動屈曲が45°、他指は可動域制限を認めず筋力は弱いもののほぼフルレンジ自動運動が可能です。


 ○腱鞘切開後の該当腱の滑走状況は?
 
 母指以外は手関節背屈位での指全伸展が可能で、遠位方向への滑走は問題なく、底屈位での自動屈曲も可能なことから滑走状況には問題は少ないと考えていますが、評価方法がこれで正しいか自信がありません。母指は運動制限や自動運動能の低下がある状況で、滑走状況の鑑別評価の知識が乏しい状況です。


 ○疼痛部位は圧痛のみで運動時痛はない?

 可動域ないの自動運動では痛みはあまり目立ちませんが、母指球内側と手根近位中央部には著明な圧痛を認めます。軽く押す程度で飛び上がりそうなぐらいの痛みです。痛みを感じる範囲は限局しています。

 ○母指の運動制限の原因は関節拘縮? 腱癒着? 筋力低下? 疼痛性?

 最終域感はそれほど硬い印象はなく、腱癒着と疼痛性が混在しているものと考えております。自動運動は手掌外転・対立可動域は保たれていますが自動運動はほぼ行なえません。


以上、現況で評価できている部分を補足いたしました。
また不足な点などございましたらアドバイスを含めご教授くださいますようお願いいたします。




 再訪問、ありがとうございます。
 前回と今回の文章から思うことは、評価の不足です。一筋縄でいかない症例の様で、私も戸惑ってしまいそうですが、評価が出来ないとセラピィが片手落ちとなりますので頑張って評価して下さい。

 キーワードが「手根管症候群」、「腱鞘炎」です。

 手根管症候群は絞扼性神経障害に属し正中神経の機能障害が生じます。また、正中神経は手根管内の内圧上昇にて圧迫を受けますので、内圧を上げる原因がそこにあります。滑膜の腫脹です。滑膜が腫脹すると腱の滑走を妨げたり痛みを発したりとします。

 腱鞘炎は狭窄性腱鞘炎ですので腱鞘の狭窄による症状が主です。こわばり、ばね指を含めた腱通過障害、痛みです。
まずは、これらをしっかりと評価しなければなりません。

 手根管症候群における正中神経の機能障害は、短母指外転筋の筋力低下と母指から環指橈側のしびれまたは感覚障害、それによるつまみ動作の能力低下です。

 短母指外転筋のMMTが「2」とありましたが、最初のメールでは母指の自動外転・屈曲・対立がほんのわずかしか行えないとあります。MMTの評価の仕方まで言及してしまったら話が先に進みませんが、短母指外転筋の筋収縮は確実にありますか。

 感覚障害もしかりです。感覚テストは感覚障害を認める例に限って行うものではありません。
 例えば、前骨間神経障害では感覚神経に障害は生じません。運動神経のみの臨床像です。ここでは“感覚障害がない“ということを証明するためにきちっと感覚検査(SWT)を致します。曖昧ですと診断が不確実となります。
この症例では、「著明な感覚障害は認められず」とありますが、末梢神経障害例ではフィラメントを使用したSWTできちっと表示する必要がります。

 手外科領域の症例を少しでも担当する機会があるようでしたらSWTは実行できるように準備しておく必要がります。
 
 「手根管開放術後、激しい痛みと腫脹が続いていた」とありますが何が推測できますか?
 ①術後の影響による手根部腱鞘の腫脹と手指屈筋腱の滑走障害。
 ②不十分な手根管開放。
 ③神経損傷。

 ①ですと、手・手指屈筋腱の癒着による手関節と手指関節の自他動伸展と自動屈曲に制限が生じます。また、長母指屈筋腱や浅指屈筋腱の分離運動も制限されます。

 ②ですと、局所的に正中神経に圧がかかり痛みとしびれが強くなり正中神経の機能低下となります。

 ③では、術操作時の神経損傷です。手根管開放では掌側枝や半回枝の走行に破格があり誤って損傷させてしまう例があるようです。
 
 「腱鞘炎に対する切開術でしびれと腫脹が劇的に改善した」とありますが、なぜ劇的に改善したのでしょうか。ここでいう腱鞘炎に対する切開術は、どの部位の手術だったのでしょうか。
 結果論としてではなく、手術には目的があります。しびれと腫脹を取り除くためにどのような手術をされたのでしょうか。

基 本的なことですが、症例が訴える「しびれ」とは何を表現しているのかということです。治療者と非治療者間での共通言語と思っていたら大きな間違いです。患者さんの中には、痛みやこわばり感、運動障害なども「しびれ」として訴えてくることが多々あります。
 「しびれ」という意味合いを確認する必要がります。私たちが理解しているピリピリした異常感覚を指しているとは限りません。腱鞘切開でしびれが劇的に改善するとは思えません。こわばり感、痛みをしびれと称して述べておりませんか。

 「むきには現在も軽度あります」の“むき”とはなんですか。

 母指球内側と手根近位中央部の圧痛点。
 とても痛がる、軽く押す程度で飛び上がりそうなくらいの圧痛点があるようです。
 まともではありませんね。神経性疼痛が強く疑われます。
 手根部の感覚障害の有無を知りたいですね。
 掌側枝の損傷とは考えられませんか。手根部の感覚を支配する枝です。やはりSWTは必要ですね。

 ところでこの症例の主訴はなんでしょうか?
 機能障害の改善であれば、改善できるものと出来ないものを明確にする必要がります。

 他医から来られた症例の多くは、納得できる説明がなされない、治療効果が得られない、逆に症状が増悪したなど、前医に対する不満が転院の理由です。
 転院した理由を確認し、同じことを繰り返すことなく、どのような症状で、どのように診断され、どのような治療(観血的、非観血的)が施され、効果があったもの、効果のなかったもの、増悪したものを知る必要がります。申し送りがない場合には、症例からの情報をもとに推測していくしかありません。
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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