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2016. 07. 31  
 手根管症候群(CTS)の治療には保存療法としてのセラピィと手術とがあります。
 すべての症例において保存療法を試み、効果がなければ手術というわけではありません。セラピィの適応は施設により様々であり一定の見解が示されているわけではありませんが、“取り敢えずセラピィから”では適応が不明瞭であり当然ながらセラピィの効果を認める割合は低くなります。

 以前の保存療法は手関節の固定が主であり、スプリントのデザインを議論していた時期もありました。日中も固定し手の使用の妨げにならないように背側型スプリントがいいという施設。CTSは女性が多く日中は固定しない(固定できない)ため、掌側型スプリントで夜間のみの固定とする施設など様々です。

 CTSは滑膜の浮腫により手根管内圧が高まり正中神経が絞扼され発症すると言われております。絞扼された正中神経は横手根靭帯との癒着により神経の滑走が妨げられます。

 癒着により神経が固定されると関節運動により神経は伸長され阻血状態に陥りますので、CTSにおいても正中神経の除圧に加えて神経滑走の拡大が必要となります。

 CTSには高率に腱鞘炎が合併します。この腱鞘炎の鎮静化がCTSの緩解に効果を示す例を経験します。そのためCTSのセラピィでは正中神経の症状だけを対象とするのではなく、合併症である腱鞘炎に対するセラピィも必要となります。

 このCTSと腱鞘炎は手外科領域の生活習慣病と言えます。この生活習慣病を改善させるためには二通りの考え方がります。一つは、腱鞘炎の引き金となっているストレッサ―を取り除く。もう一つは、腱鞘炎対策を中心としたメンテナンス(自己管理)の方法を理解し毎日実行する。

 私のスタンスは後者です。仕事の内容や生きがいとなっている趣味を制限することは難しく想います。仕事や趣味を制限しない代わりに自己管理をしっかりとする。長期間継続しなければなりませんが、継続することにより習慣となることが望まれます。これが出来なければ手術しか選択肢はありません。
 私は手術を否定しているわけではありません。非観血的療法(セラピィ)で改善できる可能性がある例では、手術を選択する前にセラピィを実行し効果を確認すべきだと考えております。

 手根管症候群のセラピィで注意しなければなら点があります。

 ①症例の自覚症状と重症度の解離
  軽症では自覚症状が強く重症化すると軽減するため、自覚症状が軽減したからと言って喜んではいられません。短母指外転筋の複合筋活動電位を導出して確かめましょう。
 症状が軽減したとして放置していると短母指外転筋の筋萎縮が生じてしまったという例を多く経験します。

 ②短母指外転筋の複合筋活動電位の理解不足
  冬場など体が冷えていると遅延する場合がありますので、冬場の値と夏場の値とを比べて改善したと決めつけない方がいいと思います。また、終末潜時の遅延は脱髄で振幅の低下は軸索障害を表現しています。

 ③セラピィの効果がなければ手術しか選択肢がないということを症例に理解してもらう。
  軽症例ではいくつかの選択肢がありますが、重症化すれば当然ながら選択肢が減ります。セラピィの効果を期待して実行しても効果が得られない例では手術の選択肢しかないということを自覚してもらう必要があります。往々にして指導された自己管理を実行されていない例がおります。リハビリ(セラピィ)だからと言って軽視しないように理解してもらわなければなりません。セラピストも、自己管理が出来ていない症例に対して、自己責任とせず、病態とセラピィの意義を分かりやすく指導し継続した自己管理が実行できるように努めなければなりません。

④何もしないという選択肢。
 極めて軽症であれば「何もしない選択肢」もあるでしょうが、知覚障害または運動障害がある例でこの選択肢はあり得ないと思います。進行性であることを医療従事者は理解すべきです。

⑤戦略の無い「様子を観ましょう(経過観察)」
 ④と重なりますが、他院からの紹介例で「様子を観ましょう」と言われているうちに筋萎縮が生じたということは稀ではありません。評価をして治療方針をきちっと設定する必要があります。
TKAで杖をつく手のしびれを訴えていたのに担当のセラピストが「様子を観ていきましょう」で母指対立再建を要する状態になった例も経験します。
現場では、確かに「様子を観ましょう」とする例はおります。症状が増悪しておらず軽快している例で神経伝導速度検査でも軽症な例に限ります。

⑥腱鞘炎の鎮静化の併用
手根管症候群は多くの例では手の過使用による滑膜の浮腫が原因であるものと考えます。どのような機序で浮腫が生ずるのかは不明ですが、手根管症候群例の60%前後に腱鞘炎が併発することは確かであり、手の使用過多が背景にあるものと考えます。生活では手を使わざるを得ないため、手の使用を制限することなく腱鞘炎を鎮静化することを考えなければなりません。そして、腱鞘炎は再発する可能性がありますので、長期間の自己管理が必要になります。

 これまで多くのCTSのセラピィを実施して想うことは、症状の良し悪しを考慮してのセラピィの適応を考えておりましたが、絶対適応は、病態を理解して自己管理が実行できる例だと思います。でなければ、いかに軽症であっても手術を検討すべきです。
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阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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