2016. 02. 20  
 正中神経のMMTでは、方形回内筋、長掌筋、橈側手根屈筋、示指の深指屈筋、浅指屈筋、円回内筋、短母指外転筋を評価するようにしております。
 この中で示指の深指屈筋は触診が困難なので自動運動における可動範囲を観察するのですが、MMTの教科書に掲載されていない落とし穴があります。
 
 正中神経支配の指外来屈筋は深指屈筋と浅指屈筋です。
 浅指屈筋は正中神経支配。
 深指屈筋は示・中指が正中神経支配で環・小指が尺骨神経支配。

 高位正中神経完全麻痺では、環・小指の完全自動屈曲が可能で、示・中指ではIP屈曲が不可能となるはずですが、意識して観察している症例の方々の手は、中指から小指までが完全屈曲が可能で、示指が中等度の屈曲の状態でした。
 完全麻痺の状態ですが、示指の屈曲が観察されます。

 中指は尺骨神経支配ということは理解できますが、受傷間もなく、チネル徴候の末梢への伸展もない状態です。
 中指から小指を伸展位に保持しての自動屈曲ではまったく自動屈曲は出来ません。
 対側ではDIP関節の自動屈曲が観察され、示指と中指から小指の深指屈筋は分離されていることが理解できます。

 おそらく示指の深指屈筋に隣接している尺側の深指屈筋の筋収縮が、麻痺して収縮できないはずの示指の深指屈筋の筋を近位方向に牽引し、あたかも橈側(示指)の深指屈筋に収縮があるか如く自動屈曲運動が発現したものと考えます。

 これを理解していないと、回復していない神経を回復していると解釈し、不用意に経過観察を延長したり、予後予測を外してしまったりし、積極的な治療の機会を失ってしまいます。

 前骨間神経障害でも同様な現象が観察されます。浅指屈筋は障害されませんのでPIP関節の自動屈曲は十分ですが、DIP関節の屈曲不全。この屈曲不全が、尺側指の伸展状態とフリーとでは異なります。統一したMMTの手技が必要と思います。

 結論。
 示指の深指屈筋のMMTを測定する場合には、尺側の指を伸展位に保持し、その状態での示指自動屈曲で測定する。
 中指の深指屈筋は尺骨神経支配が多いので、この際、横に置いておく。
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阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
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