2016. 01. 01  
 これまでに、私が末梢神経障害例に携わる姿勢ではいくつかの変容がありました。

 はじめは、MMTと感覚検査が評価の中心でした。
 その後、神経幹伝導検査で運動障害のある筋の応答収縮を目で確認することにより伝導ブロックの有無、または軸索障害の有無を知ることが出来るようになりました。
 神経伝導速度検査を実施するようになっては客観的に神経機能が評価できるようになり、末梢神経障害の理解が深まったと自負しております。

 しかしながら、患者の主訴をこれらの検査で表現できない方々は稀ではなく、ローテクでどこまで評価できるかが私の目標となっております。

 高価なハイテク機器で多くのスタッフを駆使して評価している大学病院のお医者様には、あの検査をしたのか、この検査はしないのかなどと言われましたが、診断がつくのにどれくらいの時間と費用が要るのか・・・。

 外傷性胸郭出口症候群では、いわゆる“むち打ち”で斜角筋が筋性拘縮となり腕神経叢を絞扼してしまいます。
 このような症例では神経の滑走が著しく制限され上肢の運動に伴い神経が伸張され症状が増悪されます。
 手関節の屈曲拘縮を認める例、on handが出来ない例、肘を伸展できない例など。全て腕神経叢の神経固定効果陽性。減張で緩解し緊張で増悪。まさに、神経滑走障害以外には要因は考えられません。


 関節では、関節拘縮で関節可動域の拡大。
 腱では、腱癒着、腱通過障害で腱滑走の拡大。
 筋では、筋短縮、伸縮幅制限で筋の伸縮の拡大、筋力増強。

 臨床ではこれだけでは十分ではありません。

 筋の起始停止より長い神経の起始停止。当然ながら間にある関節の数も増えますし、頚部の動きも必要となります。症例によっては体側の肢位によっても影響されますし下肢の肢位にも影響されます。

 関節では単関節での可動域を拡大する際には拮抗する筋の減張位で行います。

 筋の伸長(ストレッチ)は、起始と停止の距離を拡大していきます。この場合、伸張痛が生じます。

 腱の滑走では、自動と他動運動とで遠位方向と近位方向と滑走方向が異なります。

 神経では伸長と滑走とに分けて考えなければなりません。
 筋と同様に起始と停止の距離を拡大することによる伸張と腱滑走と同様な近位方向と遠位方向への滑走があります。
 神経ではしびれや痛みが誘発されますし、長時間行うことにより神経機能自体を悪くさせてしまうこともあります。つまり、麻痺を助長させてしまうということです。


 胸郭出口症候群では絞扼している斜角筋の筋性拘縮を改善させなければなりません。
 これが緩んでからセカンドステージとして腕神経叢の滑走の拡大を図ります。
 近位弛緩、遠位緊張で腕神経叢は絞扼部位から抜けだすことが出来ます。
 患者さん曰く「ニュルッと!」。セラピストの私はスーッと力が抜ける感じがします。それで一気に症状が緩解します。


 この神経滑走を手根管症候群と肘部管症候群にも応用できます。
 詳細は来年の広島学会で報告しますが、絞扼部位を緩め、神経の滑走を拡大します。

 神経の滑走は腱の滑走と同じではありません。
 神経は緊張の平衡を保とうとしております。どこかに緊張がかかると緊張勾配が生じますので緊張勾配の低い方から高い方へ滑走し平衡を保とうとします。この緊張の勾配を人為的に作り出して神経の滑走を拡大していきます。

 この特性を考えると外傷で神経断裂し縫合された症例では神経に緊張をかけない肢位での固定が必要になります。

 例えばリストカットでの正中神経断裂例。
 神経縫合後は手関節屈曲位で保護しますが、肘は固定しませんので肘と肩の運動により正中神経に緊張がかかり縫合部にギャップが生じ神経腫形成となる可能性があります。
 神経腫が腱に癒着していた例では手指の運動に伴い痛みとしびれが誘発されておりました。

 外傷後、神経縫合後、肘部管症候群の術後、手根管症候群後など、稀に神経が癒着し痛みやしびれが誘発される例では神経の滑走を引き出していく必要があります。



 このブログを更新しようとPCに向き合っていましたら2015年から2016年に年を越してしまいました。
 深大寺の鐘の音で新しい年の時間が動き出したようです。

 今年も私なりにブログを更新致します。

 学術集会では、胸郭出口症候群、手根管症候群、肘部管症候群、神経滑走、神経固定効果、そして、腱鞘炎と限定的なキーワードとなりますが臨床でお役にたてるような報告をしていきたいと考えております。
 もう少し頑張って、痛み、術後の神経性疼痛について臨床的な知見が得られればとも考えております。

 今年もよろしくお願いいたします。
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阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
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