2014. 09. 26  
 橈骨神経の麻痺には上位麻痺と下位麻痺があり、前者では下垂手(drop hand)、後者では下垂指(drop finger)を呈します。
 下垂指は後骨間神経麻痺で認められ、手関節は後骨間神経が知覚枝と分岐する手前で運動枝がでる橈骨手根伸筋により橈屈を呈するものの手関節の伸展が可能であり、長母指伸筋・短母指伸筋の麻痺による母指の自動伸展障害と、示指から小指にかけての示指伸筋・指伸筋・小指伸筋の麻痺によるMP関節の自動伸展障害から、前述の下垂手と区別され呼称されています。
 完全麻痺であれば容易にその病態を把握できるのですが、不全麻痺では患者自身が気付きにくく、第三者に指摘されて来院される例もあります。
 つまり、物を把持するためには指を伸展するのですが、腱固定効果により手関節を掌屈するとMP関節は容易に伸展されるために、手の能力障害に気づかないようです。
 このような例では、手関節を背屈位に固定するとMP関節の伸展不全を確認することが出来ます。中には、力比べのように手関節を掌屈しMP関節を伸展しようとする方もおられますが、手関節の掌屈をしないように指示するとやはりMP関節の伸展不全を認めます。
 このような方々は机上の物品把握にはそれほど障害を感じないのですが、床上の物品を拾い上げようとする動作では、手関節は背屈位となりますのでMP関節の伸展不全による能力障害を強く感じます。
 そうしますと“下垂指”を定義するとすれば、『手関節を背屈位に固定した際に、MP関節が伸展不全を呈する』となります。
 指伸筋はIP関節を屈曲してMP関節を伸展させるという文言を時々目にするのですが、内在筋の筋性拘縮が強い例ではIP関節を屈曲することによりMP関節の伸展が制限されますので、IP関節の屈曲という文言を定義の中には入れませんでした。
 この内在筋拘縮例ではMP関節は伸展不全でなく伸展制限を呈します。つまり自動的にも他動的にも伸展が制限されます。また、RA例での示指から小指のすべての伸筋腱が断裂しの下垂指では後骨間神経麻痺同様の伸展不全を呈します。
 後骨間神経麻痺では感覚障害が生じませんが、母指の橈骨神経支配筋を診れば分かるものですので、内在筋拘縮や伸筋腱断裂との鑑別は容易です。
 はたしてこのように後骨間神経麻痺由来の下垂指、後骨間神経の代名詞となっている下垂指を病態が異なる下垂指と混同して使用していいのか悩むところです。
 しかしながらC8の神経根障害におけるMP関節伸展障害では下垂指と明記されており、障害像をイメージする意味ではこだわらなくてもいいのかもしれません。

 下垂指一つをとっても、内在筋拘縮、指伸筋腱皮下断裂、後骨間神経麻痺、C8神経根症、局所的な脳梗塞と鑑別をしなければならない疾患がたくさんあることを理解する必要がります。

 MMTでは手関節中間位での検査となっております。上記の定義から考えますと手関節伸展位での伸展不全はGoodでも生ずるものだと推測します。
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阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
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