2018. 04. 14  
  『側索を操る』と大きなことを言ってしまいましたが、側索を診ることが出来れば一歩前進が出来ます。

 解剖学の本から静的な画像で側索の走行を知っていると思いますが、それは知識としてあるだけで臨床的ではありません。
 側索は指伸筋腱という理解ですが、IP関節を屈曲するためにPIP関節の側面での下垂機能がとても重要となります。
 MP・PIP・DIP関節伸展位から総屈曲位までの指背腱膜の長さは延長されなければなりません。延長されなければ、それこそ腱固定効果陽性となります。腱自体は延長されませんので何かがどうにかしなければなりません。何かは側索で、どうにかは下垂ということになります。つまりショートカットです。このショートカットが制限される(下垂制限)と当然ながら他動的に屈曲が制限されてしまいます。
 DIP関節やPIP関節に屈曲制限がある例では側索の機能障害の有無を確認する必要があります。


 指の特有な変形も側索が影響しております。

 スワンネック変形は、DIP関節が屈曲位でPIP関節が過伸展位となる変形です。
 発症原因は様々ですが側索が拳上したまま下垂が出来なくなった状態です。
 放置しておくと関節拘縮、内在筋拘縮を呈してしまい、内在筋プラス肢位となってしまいます。病態によっては内在筋拘縮が先行することもあります。
 PIP関節の運動軸の背側に側索が固定され、PIP関節の過伸展が強いと側索の下垂が制限され自動屈曲が不可能となります。
 対策としては、PIP関節の伸展を制限するスプリント装着、内在筋の伸張、DIP関節とPIP関節を十分に屈曲させ側索を下垂させることです。

 ボタン穴変形は、DIP関節が過伸展しPIP関節が屈曲位となる変形です。
 中央索が断裂し側索が下垂したまま拳上が不可能な状態。
 ボタン穴変形のきっかけは中央索の断裂または緩みです。
 中央索の機能障害によりPIP関節の伸展不全が生じ、これをDIP関節の伸展力で補おうとして側索に緊張が増し、DIP関節は過伸展し側索は下垂してしまいます。

 側索を含めた指背腱膜の運動が、いかに巧妙にできているかということに驚かされてしまいます。


 Elsonテスト   中央索の連続性の有無を診るテストです。
 突き指でも切創でもPIP関節の伸展制限が生ずるケースがあります。
 突き指でPIP関節が腫れているだけでもPIP関節に伸展制限が生じ、中央索の断裂と誤って判断してしまうこともあります。

 このElsonテストは、中央索の断裂の有無を側索の運動を通じて知る手法です。
 PIP関節を屈曲位に固定したままDIP関節を自動伸展するように指示します。
 中央索が断裂していれば、指伸筋の伸展力は側索を通じてDIP関節を過伸展させます。
 中央索が断裂していなければ、指伸筋の伸展力は中央索でブロックされますので側索には伝わりませんのでDIP関節は伸展不能となります。

 この関係を理解すると次に知識が広がります。

 側索を利用しての中央索断裂修復後の後療法
 DIP関節を屈曲することにより側索は末梢に滑走させられます。そうしますと側索が起始している中央索にも末梢方向への滑走が加わり、側索が起始する部と中央索が停止する区間は“減張状態”となります。この区間に縫合部があると減張位の状態でPIP関節を屈曲させることが可能となります。

 巧妙な運動をする側索を今一度眺めなおしてみては如何でしょうか。
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2017. 08. 07  
 腱縫合後の後療法を担当するものにとって、“指が曲がらなくなった”、“力が入らない”、“グズッとした”“ブチッとした”など、再断裂を思わせる訴えにはつい敏感になってしまいます。
 腱癒着を前提としたら腱断裂はゼロでしょうが、腱滑走の獲得を前提としたら再断裂はゼロにはなりません。しかし、ゼロに近づけることはできます。
 
 腱損傷ばかりではありませんが、患者と医師、セラピストのコラボレーションが大切です。

 強い腱縫合、適度な緊張度、腱鞘の処置、縫合腱のスムースな腱鞘通過。
 手術合併症対策、縫合腱減張位の理解と減張位でのROM運動の実施、腱滑走運動、適切なスプリントの作製と装着、患者教育。
 自己管理の理解、自主トレの実施。
 
 自宅で再断裂すると患者の自己管理の悪さが指摘され、リハビリ中ではセラピストの注意不足が指摘されます。でも、縫合しリハを処方したのは医師です。
 だれの責任ではなく再断裂した原因を検討しなければなりません。
 一番ショックなのは患者さんです。痛い思いするのも患者さん。振り回されるのも患者さん。
 
 再断裂の可能性はどこにあるのか?
 他組織損傷がないとして考えてみましょう。

 腱縫合法:早期運動療法の適応とならない腱縫合法。

 腱縫合部:縫合部が膨瘤し腱鞘を通過することが出来なければ屈曲不全となります。浮腫が消褪することにより通過するケースもあるため無理に通過させようとせず、屈曲不全となる狭い範囲の滑走を維持し抗張力が増してから滑走拡大を図る。

 スプリント療法:静的な背側スプリントは縫合腱に過度な緊張が加わらないようにするのが目的。的確な伸展ブロックで過度な緊張を回避する。
 術後5から6週で作製する動的スプリントで縫合部への過度な伸長が加わらないか。一方向への滑走がストレッチにならないように固定肢位を考慮する。
 スプリント装着下での前腕の回内外や手関節の運動をする例があり、スプリントがずれての固定肢位の変化や痛みの原因となるため、スプリント装着に関する装着指導がなされるべきである。
スプリントを外しての手の使用制限、更衣動作への教育がなされているか。圧迫による痛みで外してしまい例があるため、作製後は細かく装着感に関して確認する。
 スプリントを勝手にカットしたり成形したりするケースを過去に経験しているので要注意。

 夜間時の固定肢位:不意に屈曲した際の過緊張対策がなされているか。

 浮腫や腫脹への配慮不足:浮腫、腫脹は可動域制限に関与するため、自動運動で過度な緊張が加わる可能性がある。冬季に凍えた手を急激に温め血管拡張による腫脹により可動域の制限増もあるため要注意。

 減張位の理解不足:単関節の運動の際にその運動が縫合腱に緊張が加わるものであれば、隣接関節の肢位により減張を図る必要があります。しかし、既に腱に癒着が生じてしまった場合、定型的な減張位が減張位とならない場合があります。減張位が有効な癒着は腱固定効果陽性の場合であって陰性では縫合部に過度な緊張が入ります。

 患者指導:腱や腱縫合に関しての知識は皆無なので、医療従事者の常識を期待することは出来ません。患者さんが理解できるように十分に説明する。想定外のことをするケースがあるため、これまでの事例も含め説明していく。十分に説明しても理解できないケースは、早期運動療法の適応ではなく固定法を選択すべきである。
 スプリントの装着の意義、していい運動としていけない運動の説明。

 早期に癒着が生じてしまったら、抗張力が高まってから持続的に緊張を加え癒着をルーズにし、早急に過度な緊張を加えることは再断裂のリスクを高めてしまいます。

 腱縫合状態、腱周囲の状態、患者の理解度、セラピストの技量により、腱縫合後の腱滑走の再獲得が左右されます。既存の文献の模倣でなく、その意味合いを理解して対応する必要があります。
2017. 04. 10  
 腱縫合術の後療法では、合併症である腱癒着を予防し腱滑走の維持・拡大を図ります。
 癒着は病的反応ではなく正常な創傷治癒の反応です。ですから癒着を前提に対応しなければなりません。癒着がなく滑走状態が良好な例では“創傷治癒が不十分”と解釈し抗張力の強い運動や作業は遅らせるべきです。

 術後の合併症には、癒着の他に外傷や手術による腫脹や熱感、痛みなどの炎症反応も生じます。腱滑走運動に先立って坐薬での除痛やアイシングにてこれらを可能な限りコントロールする必要があります。

 よく“癒着を剥がす”と言いますが、剥がすものでしょうか?
 気持ちは理解できますが、剥がすことに執着すると強力な運動を強いることとなり断裂のリスクが高まるのではないでしょうか。

 例えばPIP関節の脱臼で掌側板が損傷し深指屈筋腱と癒着する例は経験するものです。
 当然、関節可動域の制限も生じます。関節可動域だけを拡大しようとしても腱が癒着しているのでなかなか可動域の拡大を得ることができません。他動的な可動域拡大を図ってから腱滑走運動を繰り返すことにより“グズッ”と剥がれ一気に自動屈曲が拡大することがあります。腱が剥離された瞬間です。局所的な癒着の剥離は可能ですが腱損傷のない症例に限ります。

 腱断裂後の縫合腱の場合、このように剥がれるという経験は私にはありません。
 “グズッ”となったら断裂です。“グズッ”と同時に自動屈曲が不能ということになります。腱縫合後の腱癒着は剥がすのでなくルーズにして可動範囲の拡大を図る感じです。持続的な自動運動、他動運動にて癒着組織に緊張を加えていきます。

 次に、腱縫合の危険因子です。当然ながら腱の再断裂となります。
 再断裂は最悪な状態ですので強引な滑走は慎まなければなりません。腱縫合部が腱鞘を通過できない例、抗張力の弱い腱縫合例、感染や汚染された腱・腱周囲組織例などでは、早期自動運動は適応外だと思います。
 今ではほとんどが術後翌日からの後療法となっておりますが、仮に術後1週頃に処方された場合、抗張力が弱いのに癒着が既に生じているので、早期自動運動療法はハイリスクとなります。

 この腱癒着と再断裂を回避し本来の腱の滑走を得るためには、腱縫合部に過度な緊張が加わらないようにする必要があります。
 
 「過度な緊張」
 屈筋腱での過度な緊張は、強力な自動屈曲、自・他動伸展と言えます。
 伸展拘縮の指を制限以上にまたは屈曲不全以上に自動屈曲させようとすると等尺性の運動が抵抗運動となり過度な緊張がかかります。可動可能な範囲内での自動運動とStop & hold運動にて他動的に屈曲し努力下での屈曲保持は行わせないことで過度な緊張を回避することが出来ます。経過日数により抗張力が高まりますので、どのタイミングでどのような自動屈曲を入れるかは担当医と取り決めておく必要があります。


 「減張位」
 腱縫合の後療法で減張位を常に意識しなければなりません。
 “腱縫合部への緊張を減らした肢位”。
 腱縫合部に対して末梢方向と中枢方向との両端から張力を加えると腱の再断裂のリスクは高まります。そのため、リスクを回避するために一端を緩め反対側に緊張を加えます。
 中枢側への滑走は筋収縮のみで行われますので力の入れ具合を指示しなければなりません。

 ちなみに、数名に健側で握力計を握りながら(表示は見せないで)5割程度の握りを指示すると7から8割くらいと超過していました。安易に「○割程度の力を入れて」とは言わず、健側手でこれ位ということを実感してからの方がセラピストと症例間での力の入れ具合が共有できるように思います。
 屈曲保持運動では他動屈曲位を強力に保持するのではなく、その位置に留まる程度の握りとします。保持できなく伸展してしまっても努力下に屈曲しないように指導すべきです。
 私は癒着をルーズにしたい観点から、10秒10回の屈曲保持運動と持続的な他動伸展を繰り返し行うようにしております。

 末梢方向への滑走は、中枢側の関節で緊張を減じ末梢側の関節の自動・他動運動にて行われます。減張位は張りを減らすことであり張りがない状態ではありませんので関節運動と癒着部との位置関係を考慮して強弱をつける必要があります。出来れば癒着が僅かな早期の段階から完全伸展を維持することです。

 腱の滑走に関しては、腱の強度(抗張力)と自動屈曲の強さ、他動伸展の強さを考えなければなりません。外傷による反応、腱鞘の損傷状態や修復状態、腱縫合後のボリューム、患者さんの協力、セラピストの技量など多くの要因により結果に相違が生じることを日々痛感させられております。私にとって未だ気が抜けない領域です。
2016. 03. 15  
 リウマチの手指伸筋腱皮下断裂の修復後の後療法の一つに、手技が簡便で安定した成績を収めることができる石黒法があります。

 この石黒法は、減張位を図るという理由で橈側指に尺側指を乗せるテーピング法が推奨されておりましたが、その後、石黒先生自らが乗せる必要がないと述べられ、症例にとっては窮屈な思いをせずに6週間のテーピングとなりました。

 この石黒法でのテーピング固定により減張位を図るという刷り込みがあり、私にとってこの“減張位”というキーワードには違和感があります。

 例えば、環指と小指の伸筋腱が断裂した場合、中指の伸筋腱に環指と小指の伸筋腱を縫着。後療法としては、小指を環指に、環指と小指を力源となる中指にテーピングで固定する。その状態で手指の屈伸運動を制限なく行い、腱滑走を促していきます。術後の合併症である腱癒着を予防する必要があります。
 
 徒手的には、中指を他動的に屈曲した状態で環指と小指の他動屈曲を行いますが、中指の他動屈曲を先行することにより減張位を図ります。これが私にとっては石黒法の減張位だと思います。

 中指を他動屈曲すると腱縫着部は末梢に滑走します。環指と小指の伸筋腱の緊張は緩みます。減張ですね。ですから、環指と小指は安全に他動屈曲できます。
 伸展では、他動であれば減張ですが、環指と小指を屈曲したまま中指のみの自動伸展では腱縫着部の緊張は増します。減張位のためには、中指と環指、小指が同時に伸展されなければなりません。

 このようなことから、石黒法=減張位というより、テーピングで中指と環指、小指を一つにまとめて同時性を確保することで、単独運動に伴う腱縫着部への過緊張を防止すると解釈できます。

 ですから、テーピングで中指と同時の屈伸運動することにより減張位が図れるということでなく、単独指の屈伸運動による過度な緊張を避けるためのものなのです。

 そうしますと、テーピングの固定はタイトにする必要がなく、中指と環指、小指の屈伸運動に同時性が確保できるくらいのラフな固定でよいということになります。
2014. 08. 10  
 手関節伸筋には橈側手根伸筋(ECR)と尺側手根伸筋(ECU)があり、ECRは長手根伸筋(ECRL)と短橈側手根伸筋(ECRB)とがあります。
 ついつい臨床ではECRLとECRBを区分することなく診てしまいますが、これらの停止部の違いや神経の筋枝の位置の相違があり、最近では区別して診るようにしています。
 つまみ動作には手関節の橈屈運動が重要であると言われており、この橈屈作用はECRLの機能があって得られるものです。
 ECRLの皮下断裂例でのつまみ動作では、手関節橈屈不足に対する肩と肘の代償運動が生じております。

 ECRLとECRBは上腕骨外側上顆から起始しますが、ECRLは第2中手骨底背側部にECRBは第3中手骨底背側部にそれぞれ停止します。停止部からECRLが橈背側へECRBは純粋に背屈側への力源となります。
 第2・3中手骨のCM関節は可動性がなく近位手根列と一つのユニットを形成しています。このユニットにECRLとECRB、FCRが停止しており、手の機能の要となっていることは容易に想像できます。

 後骨間神経麻痺に観られる手関節伸展は、ECUが麻痺しますので橈背屈となります。
 破格でECRLが第3中手骨に停止する例もあると言われており、このような例では橈側に偏らない背屈になるためECUの麻痺がないものと判断してしまう可能性があります。
 また、ECRLの停止部が第2中手骨であっても、ECRBだけで背屈することも不可能というわけではありませんので,やはりきちっとECUの麻痺を確認すべきです。

 橈骨遠位端骨折で粉砕が強い例では、創外固定後プレート固定し、2週間ほど手関節を外固定することもあります。早期より指の屈伸筋腱の滑走運動は可能ですが、特に手関節伸筋腱は骨面を滑走床としておりますので腱癒着は避けきれません。癒着が生じますと手関節の機能障害により橈屈や尺屈がスムーズに行えず手の能力障害に反映されてしまいます。骨折では合併症の一つである腱癒着には十分気をつけなければなりません。

 ECRLもECRBは手関節背側でリスター結節橈側に、ECUは尺骨茎状突起にそれぞれ腱の走行が確認でき、表層筋である筋腹は腕橈骨筋のすぐ隣にECRL、その隣にECEBが触診され、ECUは尺骨の骨幹部を指で確認し、その指を伸筋側にちょっとずらすと触診できます。
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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