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2019. 02. 23  
 チネルサインは、損傷された感覚神経の再生軸索の最先端、神経腫が形成されている部位を知るもので、日常臨床では頻繁に行われる検査の一つです。
 感覚神経の直上を末梢から中枢へ向かって軽く叩打していくと、その神経の固有知覚領域に放散痛が生じます。
 絞扼性神経障害ではチネル様サインと言われ、絞扼による低酸素状態または脱髄による易刺激性の神経を叩打するとチネルサインのように放散痛が生ずる。

 検者としては、固有知覚領域での放散痛は、検査している神経の叩打(刺激)による応答反応と疑いもなく解釈しています。
 この当然な刺激と応答反応がずれるケースがあり、ものすごく悩んでしまうことがります。

 骨伝導による応答反応(放散痛)です。


 橈骨神経と外側前腕皮神経とでは感覚支配領域が7割で重複されると言われております。母指のCM関節周辺もその重複の領域に含まれます。
母指のCM関節の痛みを訴えた例に対して神経性疼痛を疑いチネルサインを観てみると橈骨神経でも外側前腕皮神経でも放散痛が誘発されます。
 悩んだ末に、前腕遠位を把持してチネルサインを観てみると橈骨神経では放散痛は誘発されず、外側前腕皮神経で放散痛が誘発されました。
 骨伝導による応答反応だったのです。
 骨伝導で誘発されるということは大変紛らわしく思いますが、神経性疼痛を訴える例は些細な刺激に反応しているのだということが再確認できます。
 

 母指から環指橈側のしびれ。就寝によりしびれが増強。手根管症候群のようです。
 短母指外転筋の終末潜時の延長を認めませんが、手根部のチネル様サイン陽性でファーレンテスト陽性、神経幹圧迫検査陽性であれば、ほぼ手根管症候群と判断してしまいます。
 もう少しチネル(様)サインを中枢方向まで追ってみますと、前腕にも上腕にも正中神経の走行上に認めます。Morleyテスト陽性、Wrightテスト陽性、Roosテスト陽性、Edenテスト陽性、下方ストレステスト陽性、阿部テスト陽性。このように症状や理学所見が正中神経に極めて類似する胸郭出口症候群という例もあります。

 チネルサインは、末梢から神経直上を叩打するに対して、絞扼性神経障害例に対するチネル様サインは絞扼部だけ叩打しているようです。手根管症候群ですと手根管部、肘部管症候群ですと肘部管の範囲のみと。胸郭出口症候群は絞扼性神経障害を診ていく上で、鑑別しなければならない疾患なので、手根管症候群では正中神経の走行に沿って鎖骨まで、肘部管症候群であれば尺骨神経の走行を手関節のGuyon管から鎖骨まで叩打する必要があると思います。時間的に10秒もかからないものなので負担にはならないと思います。やはり、Morleyテストをみるのがいいのですけど。

 このように軸索の再生を観察するチネルサイン。絞扼性神経障害部位を観察するチネル様サイン。胸郭出口症候群のように障害神経全域に認める叩打痛(軸索の再生でも絞扼性神経障害でもないので・・・叩打痛としてみます)を分けて観ていく必要があります。
 神経障害部位を示唆する圧痛も貴重な情報を提供してくれますが今回は省きます。
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2018. 09. 09  
 手根管症候群の手(CTS hand)とは、手根管症候群の症状を呈している手ではなく、手根管症候群に腱鞘炎も合併している手をさします。このCTS handは私の造語です。
 このCTS handとすることによりセラピストが腱鞘炎に対して注意を注いでくれることを切に望みます。

 手根管症候群は絞扼性神経障害の一つで、正中神経障害の代表的な疾患です。
 当然ながら正中神経の障害ですので評価項目は正中神経障害となり、治療も正中神経機能の回復となります。

 しかしながら、手根管症候群には腱鞘炎が高率に合併しますので、患者さんは手根管症候群と腱鞘炎を区別することなく手の不調を訴えてきます。そのため保存療法では手根管症候群の除圧と腱鞘炎の鎮静化を図る必要があります。

 患者さんの訴えられる自覚症状は、
 正中神経系では、母指から環指のしびれ、感覚の鈍さ、つまみにくさ、就寝時の痛み。
 腱鞘炎系では、手のこわばり感、手掌の違和感、痛み、指の関節が硬い、ばね指、腫れぼったいなど。

 このような症状が混在した手を敢えてCTS handとし、取りこぼしがないように対応することが望まれます。
 今後、手根管症候群の診断名の患者を診る際には、このCTS handを思い出し腱鞘炎の評価と治療を追加するようにして下さい。

 ちなみに、数人の手根管症候群との診断がなされていない腱鞘炎由来のstiff hand(拘縮手)例の正中神経から短母指外転筋の複合筋活動電位を導出すると終末潜時の延長を認めます。
 どういうことを意味しているのでしょう。お分かりいただけたでしょうか?
2017. 12. 19  
 しびれはだれしもが経験する不快な感覚です。正座で生じるしびれは足を崩せば容易に改善しますが、医療機関での専門的な加療を要するしびれもあります。一般的にしびれに対する危機感が患者側にも医療従事者側にも薄いような気がします。しびれは神経の悲鳴と解釈しております。神経に圧迫や緊張が加わるとしびれが生じます。神経の悲鳴であるしびれを放置すると神経の障害が進行し、感覚が鈍くなったり、力は入らなくなったり、最悪、回復が望めないことさえもあります。

 しびれは求心性のインパルスで脳がしびれを感じますが、同様に痛みも求心性にインパルスが走り脳が痛みを感じます。
 痛みは、健常者にも備わった感覚であり生体防御として重要な感覚でもありますが、しびれは健常者には存在しない感覚であり、神経の障害により生ずる異常な感覚です。

 このようなしびれを愁訴として来院してきた患者と先ず始めに行うことは、しびれの意味を確認することです。
 一般の方は運動系と感覚系の症状をしびれと称して訴えてきます。
 運動系では、筋力低下(力が入りにくい)、振戦(震え)、こわばり感など、感覚系では、感覚鈍麻(1枚皮をかぶった感じ)(感覚が鈍い)、異常感覚(ジンジン)(ビリビリ)(チリチリ)(ピリピリ)(触れると嫌な感じ)と訴えられます。
 しびれは感覚系の症状であることを再確認する必要があります。

 しびれは感覚伝導路の障害により生じ、原因としては神経圧迫,循環障害,心因性要因があげられます。
 心因性要因は、ある施設によってはしびれを訴える患者の4割程度という報告もあります。「器質的病態が見当たらず、むしろ精神的要因と考えられる」と記されておりますが、このような患者の疾病利得を推測すると、評価側の私が欠落している診方があるように思えてなりません。とにかく安易に判断するのではなく慎重さが求められます。

 末梢神経障害では刺激症状であるしびれの他に感覚障害や筋力低下、筋萎縮など脱落症状も評価します。
 刺激症状の強さは神経障害の進行度とは無関係であり、脱落症状は神経障害の進行とともに増大します。その点を理解して評価する必要があります。

 しびれの訴えは自己申告であり具体的な数値で測定することはできません。
 患者のしびれの範囲、しびれの強さ、しびれのオンとオフを聴取し、しびれの程度を可能な限り共感できるように努める必要があると思います。
 また、しびれが誘発される動作や姿勢はしびれの病態を知るうえで必要であり生活指導にも使えます。
 反対にしびれが緩解される姿勢ではそれ自体がセラピィのヒントになりますので、誘発と緩解を理解することは末梢神経障害の評価と治療にとって欠かすことが出来ない手技であると思います。

 本日、新宿の朝日カルチャーセンターで「しびれは神経の悲鳴―手のしびれの対処法―」について話して来た内容を簡潔にまとめ加筆したものです。
2016. 12. 19  
 手根管症候群(CTS)をセラピストの立場から診ると腱鞘炎のコントロールと正中神経の滑走の拡大が基本となります。

 “CTSに合併するばね指”的な報告は多々あり発症頻度は3割程度のようです。しかし、ばね指は腱鞘炎の病期の一過程にすぎず、ばね指が生ずる前の初期の段階から通過障害による関節拘縮の末期までを含めるとCTSの6から7割は腱鞘炎を合併するものと思います。自験例では55~64%での合併でした。

 手根管内の滑膜の腫脹により手根管内圧が高まって正中神経を絞扼するならば、内圧を下げて絞扼を解除すればいいのです。では、非観血的な立場のセラピィで何ができるのか?

 運動療法とスプリント療法、物理療法を駆使して絞扼解除する方法を考えなければなりません。

 腱鞘炎を鎮静化するためには安静が不可欠ですが日中の固定は拒否されてしまいます。夜間固定しか望めません。また、就寝時の手指は屈曲位をとりますので示指と中指の屈筋腱が正中神経に接近し加圧してしまいますので指は伸展位とした方がいいのだろうと考えました。手指を伸展固定することはA1プーリーも減張を図れますので一石二鳥となります。そういうことで夜間固定用のスプリントは手関節中間位、手指伸展位固定としました。想定通り効果的です。

 次に、腫脹と熱感に対するアイシングです。炎症により拡張してしまった血管を冷やすことで縮小させなければなりません。浮腫と熱感が改善してくるとこわばり感も改善してきます。
 理解されているようで理解されていない点ですが、炎症部への温熱療法は禁忌であるということです。日本人は温泉に関しては手放しで受け入れてしまう国民性です。調子が悪いと温泉または熱めのお風呂と考える方が多いようです。医療従事者の中でも、「取り敢えず温めましょう」的な方が多いようです。卒然教育で学習済みのはずですが・・・。
 私の日常臨床では温熱療法としての加熱よりもアイシングの使用頻度がけた違いに多く、手外科領域の手は炎症状態への配慮が必要であると思います。

 浮腫に関しては短時間でも高挙手での手指屈伸運動を行う必要があります。正中神経の神経滑走運動でいつも以上に症状が誘発されていた方に、5分間の高挙手後、再度正中神経の滑走運動を施行したところ症状は誘発されませんでした。浮腫の可及的な除去が必要であるということを痛感させられました。


 私が提唱した腱鞘炎の病期分類では、腱がどのように腱鞘を通過するかで分類しております。クリック、弾発現象(ばね指)、通過障害、拘縮などで、ここでは痛みやこわばりの有無は考慮しておりません。ここでいう腱鞘はA1プーリーでMP関節掌側にある掌側板に付着しております。腱鞘炎例の多くはMP関節の過伸展が制限されるという事実はご理解できますか?炎症により腱鞘は拘縮に陥り、その結果、掌側板の伸張が妨げられMP関節の伸展が制限されると考えられます。ですから、腱鞘のストレッチにはMP関節の過伸展が必要となります。
 手根管内の滑膜の腫脹では屈筋腱の滑走制限が生じます。手指の屈伸制限の原因となることがあるため腱滑走の運動の拡大を図る必要があります。
 このようにして滑膜の浮腫が改善すれば手根管内の内圧が軽減し正中神経の除圧が図れます。

 絞扼性神経障害を診ていく上でもう一つ改善しなければならないものが神経の滑走です。絞扼されてきた神経は癒着し滑走が制限されています。神経の滑走が制限されていると関節運動により容易に神経に緊張がかかり症状が誘発されてしまいます。神経は関節の運動により緊張が増すと緊張勾配を均一化しようと緊張部位へ向かって滑走するという特徴を利用し滑走の拡大を図ります。

 CTSでも他の絞扼性神経障害同様にセラピィの適応を考慮しなければなりません。手術絶対適応なのにセラピィを行っても効果はありませんし、逆に病期を進行させてしまう可能性もあります。セラピィの適応の裏には手術適応がありますが、施設ごとの適応があり統一した見解がありません。

 手術を選択した例では、「CTS(正中神経障害)」+「腱鞘炎」+「手術の合併症」と手術の合併症が加算されます。後療法は術前の機能障害と術後の合併症対策であり、セラピストは問題内容を想定して早期に介入しなければなりません。CTSの後療法では、術前の腱鞘炎、滑膜の腫脹と、術後の浮腫と腫脹、神経と腱の滑走制限または滑走制限の可能性、ROM制限または制限の可能性を想定して早期に対応する必要があります。早期対応の理由は予防が最善の対策だからです。そのためには早期介入のリスクを把握しておく必要があります。
2016. 09. 14  
 単独損傷した指神経の縫合例と再接着指例の知覚回復では、前者の方で早く改善を認めるとの報告があり、臨床において確認していることだと思います。
 再接着指では血流再開までに長時間阻血状態に置かれ、再接着後でも継続的な乏血状態であり、軸索再生の妨げや末梢側の阻血性変化により知覚の回復が遅延すると言われております。

 神経には血流が必要です。

 末梢神経障害例に対して神経滑走運動をおこないますが症状誘発の意味を理解する必要があります。
 絞扼性神経障害の病態は、神経の圧迫(固定)と圧迫による神経滑走制限です。神経が何らかの原因で固定され滑走が制限されると、関節運動により固定された神経には緊張が生じ血流が妨げられます。神経は阻血状態となり、結果、症状の誘発となります。

 誘発検査の多くは、神経に圧迫や牽引を加え阻血状態にして症状の誘発を観ます。
 
 固定された神経は特定の肢位により容易に阻血状態になることを理解することは、関節の可動域の拡大や腱の滑走運動、筋のストレッチで「神経にとって優しい肢位」を意識することになります。


 手根管症候群を合併した橈骨遠位端骨折例。
 手関節可動域運動の際、肘関節の角度に注意を払うべきです。
 肘伸展位で正中神経に緊張が加わり、手関節の背屈でより緊張が増します。過緊張の正中神経は阻血状態に陥りしびれが誘発されます。セラピストが正中神経に対して「優しい肢位」を意識しなければ持続的に緊張が加わり正中神経の麻痺が進行する可能性があります。手関節の背屈角度が拡大しても正中神経領域のしびれが増悪するようであれば片手落ちとなります。麻痺の進行を可及的に回避するためには、手関節の背屈運動の際には肘屈曲位で行うべきです。
 それでもしびれの増悪を訴えるならば、肩関節90度屈曲、頚部屈曲で同側側屈または回旋位を追加します。可動域を拡大したい関節以外は減張位とします。


 手根管症候群を合併した胸郭出口症候群例で、夜間固定のスプリント装着でしびれが増悪することは珍しくありません。つまり手指伸展位としたことにより正中神経は緊張するため、肘を屈曲して緊張減を図ります。これでもしびれが増悪すようでしたら一旦スプリント装着を中止し斜角筋間での腕神経叢の滑走を拡大する必要があります。
 しびれが増悪しているということは正中神経が阻血状態に陥っているということですので、圧迫や緊張の有無を確認して取り除く必要があります。

 単関節運動から多関節でコントロールする筋の伸縮、腱の滑走に加え、起始が脊髄で停止が手指の末端である神経の滑走を取り入れることでこれまで以上の運動器のセラピィ効果を得ることが出来ます。

 セラピィ施行中にしびれを訴えられたら、その領域の神経の減張位を図ってみてください。しびれは神経の悲鳴です。酸欠状態にあると理解して下さい。
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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