2017. 09. 13  
 10月15日(日)に企画した「手関節尺側部痛に対するセラピィ」は、今年の名古屋で開催されたハンド学会終了後に講師である西出先生と名古屋城を見物に行った時に、名古屋城を前にしてパソコンの画像を観ながら語りあい決定したものです。

 私は保存療法としてのセラピィ(以下、セラピィ)の重要性を強く感じ、胸郭出口症候群と手根管症候群、肘部管症候群、そして、腱鞘炎、CRPSとの鑑別を要する腱鞘炎由来のStiff handに対するセラピィに対して打ち込んできました。
セラピィにこだわる理由は二つ。
 一つは、当たり前のことですが、セラピストは非観血的治療法である徒手療法やスプリント療法、物理療法に限られているということ。
 もう一つは、少数ではありますが手術で悲惨な結果を目の当たりにした経験から、手術をしない選択肢、つまり結果を出せるセラピィを選択肢として確立するためです。

 セラピィを行うためには病態の把握が重要ですが、セラピィの適応を明らかにすることも重要です。しかし、この適応を明確にすることが大変難しく、軽症例はセラピィで重症例は手術の適応とはだれでも言えますが、セラピィと手術の適応境界ラインを引くことは出来ず、むしろオーバーラップしてしまうのだと思います。そして、コピペされたように多用されている「保存療法に抵抗を示す場合には手術が適応されます」ということになります。恐らく、この状態は今しばらく継続して言われることだと思いますが、オーバーラップの幅を狭めていく努力は必要です。この「保存療法に抵抗する・・・」の保存療法が曲者です。的確な内容だったのか? 対処療法だったのではないのか? セラピィの適応の病期だったのか? 考えさせられます。


 セラピィを頑張っているセラピストの一人、西出先生。彼の数多い報告の中で、TFCC損傷や肘部管症候群に対するセラピィは、私自身も興味のあるテーマであり、沢山のセラピストに学んでもらいたい内容でもあります。

 今回、TFCC損傷のセラピィとしなかった理由は、TFCC損傷だけが手関節尺側部痛ではないからです。
 私は、このセミナーで確認したい点は神経性疼痛との鑑別のための評価方法です。

 TFCC損傷と言われ続けドクターショッピングをされて来た症例。最もつらいのが就寝時だと言うことで、TFCC損傷でなく神経性疼痛を疑いました。軸圧痛を認めますが局所的でない手関節尺側部痛。緩みのない遠位橈尺関節。就寝時の疼痛誘発なので背臥位テストを行ったところ、肋鎖間隙狭小で疼痛が誘発され拡大で緩解したためTOSを疑いました。TOS誘発検査は全て陽性であり、肋鎖間隙の拡大、肩甲骨拳上、腕神経叢減張位で手尺側痛が緩解します。

 TFCC損傷であると明確に根拠付けるための評価は大切ですが、TFCC損傷はないとはっきりと否定できる術を持つことは、神経性疼痛例を多く担当するものにとっては重要なツールとなります。

 西出先生の話を聞いてセラピストのツールを一つ追加したいと思います。
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2015. 11. 21  
 年末にフィジオ運動連鎖アプローチ協会主催の「疼痛の評価とその臨床的意義」PART2 で、『CRPSのpitfall -鑑別を要する腱鞘炎由来のStiff hand-』について講演いたします。

 私自身、CRPSと確定診断出来た症例は3例しかおりません。
 腫脹、拘縮、痛みを呈する例で腱鞘炎由来のStiff hand例やアロデニアを呈した胸郭出口症候群(TOS)が、CRPSと診断されてリハビリに回ってきました。
 CRPSは早期発見早期治療が大切なのでover diagnosisとなってしまいがちですが、治療方針を明確にするためにも確定と鑑別は重要です。

 腱鞘炎もTOSもセラピィ内容はCRPSと異なります。

 腱鞘炎では炎症を鎮静化し腱鞘の拘縮を取り除き、腱の滑走を拡大することにより改善します。

 TOSでは斜角筋を緩め腕神経叢の絞扼を解除し、神経の滑走を拡大することにより改善します。

 手根管症候群(CTS)が疑われる例に対して神経伝導速度検査を行っております。
 600例中23例(3.8%)でCTSを否定しTOSと診断しました。この23例はPhalenテスト、Nerve compression テスト、手根部のチネルサイン陽性、母指から環指橈側のしびれで、どこから見てもCTSでしたが神経伝導速度検査で否定されました。
 そして、TOSの誘発検査と緩解検査で陽性を示しTOSと診断されました。そして、TOSリハで緩解しております。
 100人に4人でTOSなのにCTSと診断されていることになり、確定診断と鑑別診断が大切であることがお判りになると思います。

 よくあることですが、CTSなのに頚椎症と診断され半年くらい頚椎の牽引に通院していたと転院してくる例は珍しくありません。確定診断でなく思い込み診断なのです。

 「CTSとの診断は容易」と聞きますが私は決してそう思いません。
 教科書的な例ばかりではありません。鑑別があっての確定です。セラピストは診断の補助として各評価を行いますが、その過程で鑑別を意識していくことが求められます。

 CTSと確定する前に前腕から上腕部位でのチネル様サインとMorleyテストを診るだけでもTOSとの鑑別が可能です。時間的に10秒くらいの作業です。


 話はCRPSに戻しますが、CRPSと確定する前にCRPS様の疾患と鑑別しなければなりません。
 橈骨遠位端骨折後にCRPS様の腫脹と拘縮、痛みを呈する例でも、腱鞘炎の存在を証明できればCRPSは容易に否定できます。
 腱鞘炎由来のStiff hand例には冷却がとても重要ですがCRPS例には交代浴を推奨する論文が多くあります。冷却と交代浴では真逆なことです。
 腱鞘炎例への温熱療法は腫脹増悪となり治療効果どころか医原性の拘縮となる可能性があります。
 評価を解釈する上で、鑑別作業を行うことは類似疾患により判断を誤らせないためにも必要なことだと思います。回りくどい表現となりましたが、要は、確定診断するには鑑別診断が不可欠であるということです。
 ”true”なのか”disputed”なのか、区別する必要があります。


 以下、フィジオ運動連鎖アプローチ協会ホームページからの抜粋です。

 「痛みの運動連鎖セミナーpart1」においては(8月30日開催)、多くの参加者(70名)が集い、生理学・神経科学。運動連鎖の観点から4名の講師陣により痛みについて解説がありました。アンケートからも痛みに対する解決への思いと、今後の期待の声が多く聞かれました。前回を受けてpart2においては、「評価と臨床の意義」をテーマに掲げ、3名の講師陣からの企画を立ち上げました。今後、痛みのセミナーとしてシリーズ化していく講座となる予定であり、さらに継続して学ぶ機会が必要の場を作っていきたいと考えています。定員に限りがありますので、お早めにご応募ください。

 日時:平成27年12月27日(日) 10:30~16:30
 会場: 専門学校社会医学技術学院2F 4番教室
   〒184-8508 東京都小金井市中町2-22-32
   電話:042-384-1030 042-384-1030
 募集:50名

 【タイムスケジュール】 
10:30~12:00 『疼痛閾値の診断・評価方法とその意義』
  塩澤伸一郎  (日本リハビリテーション振興会・専門学校社会医学技術学院 教員) 
(要旨)筋骨格系疼痛は運動制御を変化させるということを生理学的な観点からお伝えしてきました.筋骨格系疼痛の強度とは疼痛閾値の変化によって変わります.その疼痛閾値を臨床で把握するための方法を参加者の皆さんへお伝えします.

13:00~14:30 『CRPSのpitfall -鑑別を要する腱鞘炎由来のStiff hand-』
  阿部幸一郎(東京手の外科・スポーツ医学研究所.作業療法士.認定ハンドセラピスト. HAND maintenance studio(代表)) 
(要旨)手の浮腫・腫脹、熱感、こわばり、痛み、拘縮と一見するとCRPSを疑ってしまう腱鞘炎由来のstiff hand(拘縮手)を経験することは稀なことではありません。この腱鞘炎由来のStiff handとCRPSの臨床像が類似しているため鑑別が臨床上とても重要となってきます。腱鞘炎の鎮静化を図るためにアイシングが不可欠ですが、腱鞘炎を見過ごしてしまうとセラピストも患者も温熱療法をしてしまい、意に反して症状を増悪させてしまうことになります。
今回、CRPSのPifallとして、CRPSとの鑑別を要する腱鞘炎由来のStiff handについて解説いたします。

14:45~16:15 『症例報告』スポーツ障害における痛みの機序と考え方
  山本尚司 (一般社団法人フィジオ運動連鎖アプローチ協会代表)
(要旨)オリンピックを間近に控え、スポーツ障害に対する関心はますます高まっています。スポーツ動作は一言で言うと、身体を加速度と慣性にて推進させていくアクティビティです。よってアプローチの原理原則は、推進力という観点に集約できるのです。スポーツ障害における痛みに対して、どのような共通認識にて見ていくべきか!そのような提言の場としていきたいと思います。

 参加費(税込):一般 10,000円  学生3,000円

 【申し込み先】 
  PKAA事務局 担当 薮下 享江(やぶした ゆきえ)
  undourensaapproach@gmail.com
  氏名(ふりがな)・経験年数・職業・所属・を明記。
  件名に『痛みの運動連鎖セミナー2』としてください。
  ・携帯やフリーアドレスの場合、メールがブロックされる場合や迷惑メールになってしまう場合があります。必ずセキュリティーを確認した上でお申込みください。
2011. 05. 20  
 腱鞘炎由来のStiff handに対するセラピィはアイシングが不可欠であり、徹底的に熱を取り除き炎症を抑えなければなりません。手根管症候群の検査時、手指の屈筋腱狭窄性腱鞘炎を併発し熱感を認める方には、家庭でのアイシングを指導しております。

 私の症例でアイシングを用いる症例は6から7割はいます。この数値が多いのか少ないのかは分かりませんが、私自身がアイシングの効果を認めているために多用しているのかもしれません。

 アイシングの適応は、熱感と腫脹、疼痛です。

 関節可動域や腱滑走の拡大などでは痛みを伴います。持続的に矯正力を加えるダイナッミクスプリントにおいても同様です。痛みは急性炎症を招きます。これを放置しますとこわばり感じが残ってしまい、治療の効果が半減してしまいます。翌日のセラピィにも影響を及ぼします。

 私が行なっているアイシングは、基本的に冷水に手を浸すだけの簡単なものです。
 氷嚢をあまり使用しません。術後早期段階で包帯の上からは使用するくらいです。
 洗面器に18から20度の水温の水を入れ手全体を浸します。冷たすぎると短時間で苦痛が生じてしまい持続したアイシングが困難となり、深部の熱を取り除くことができません。
 溜め水に入れられない経皮的ピンニングや未抜糸例であっても、ビニール袋で保護すれば水に浸すことは可能です。

 症例1
 突き指によるPIP関節の伸展制限例。
 担当医は中央索の断裂を疑い、私の方へ評価を依頼してきました。
 PIP関節は腫脹と熱感、運動痛を認めました。Elsonテストでは陰性でしたので中央索は連続性ありと判断し、十分に熱感が取れるまでアイシングを行い、関節可動域の拡大と中央索の滑走を図り完全伸展を得ることが出来ました。受傷後の急性炎症で関節可動域制限が生じていたのです。

 症例2
 他医で橈骨遠位端骨折後の手指の拘縮に対してリハビリを行なっていた症例です。
 リハビリはとても痛く、腫れており、痛い割には手指の拘縮が強くなるという理由で転院して来られました。
 手全体の腫脹と熱感、安静時と運動時での痛みがあるStiff hand。一見するとCRPSの状態にありました。アイシングを30分間行なうものの冷却しきれず、自宅でのアイシングを繰り返し行なうように指導いたしました。その間の関節可動域の拡大は自制内で行ないました。熱感が落ち着くのに1週間を要しました。腱鞘炎も併発しておりましたが、炎症症状は消退し可動域が徐々に拡大いたしました。アイシングの必要性を痛感させられる症例でした。

 運動器のリハビリでは痛みは伴います。痛みは急性炎症を惹起させます。これを放置したまま関節可動域の拡大を継続すると慢性的な炎症となり、拘縮を助長させてしまいます。つまり線維化です。この線維化を抑えつつ可動域の拡大を図るためには、炎症の消退を図ることがとても大切なのです。
2011. 04. 15  
ハンドセラピィは早期運動を基本としております。ご存知のように拘縮の予防がとても大切だからです。拘縮の予防と言いましたが腱癒着の予防も含まれます。

 手術翌日に開創して浮腫や浮腫をコントロールし、その後に関節運動を入れ始めます。当然患者さん達は痛みを訴えます。
特に早期運動の適応となる腱損傷の症例では、他動的な関節運動、腱滑走運動は不可欠となりますので、痛みがセラピィを邪魔してしまいます。
 痛みにより関節可動域の拡大が得られない、腱が滑走できないでは、最終的には痛がる患者さんに腱癒着という不利益が生じます。

 このような時には、担当医に相談して痛みをコントロールしてもらいます。手っ取り早いのがボルタレンの坐薬です。
 しかし、すんなりと患者さんたちは受け入れてくれません。というのは、坐薬使用自体がいやだという方がいらっしゃいます。

 「痛みを我慢すれば早く治るというものではありません。今必要なことは痛みをコントロールして目的の角度まで関節可動域を拡大することです。手術で操作を加えた腱を滑らせることがとても大切です。痛みが楽になってからでは腱は癒着し今回の手術は失敗に終わります。坐薬が好きだとか嫌いだとかでなく、明日のために今日、今日のために昨日、きちっと結果を出していかなければ動きません。」というように、説明をして納得して頂かなければなかなか坐薬を使ってくれません。
 ボルタレンを使っても痛みは消失しませんが軽減します。そうしますと軽減した分、関節可動域は拡大できます。

 決して暴力的なセラピィをするために使用するものではありません。
 
 数日使用していくと、患者さんも理解して頂けるようになり、「坐薬がなくなったので今日もらっていく。」と自ら言われるようになります。長期間使用するものではないので、術後の痛みのコントロールでは積極的に医師に相談して処方してもらってください。
2010. 12. 07  
 皆さんは臨床場面で患者さんの痛みをどのように把握していますか?
 私は関節可動域訓練の目安として“痛みの簡易尺度”を使っています。これは私のオリジナルなものですが同僚たちも使用しており、患者さんの痛みを知るためにはとても便利ですし、患者さん受けもいいようです。以下に紹介します。

 《痛みの簡易尺度》
   0:痛みなし
   1:気になる程度の痛み
   2:軽い痛み
   3:我慢できる程度の痛み
   4:我慢できるがちょっと厳しい
   5:我慢できるが厳しい
   6:我慢できない程度

 新患の方には予め理解して頂き、「今の痛みは何番ですか?」と確認しながらセラピィを進めて行きます。「4から6番の痛みは出したくありませんので正直に言って下さい。」と説明し不安や緊張を少しでも和らげるようにしています。ハンドセラピィ室のあちらこちらにこのポスターが掲示されています。「今何番?」「何番です!」「もう少し強くするね!」とか、「もう5番です!」「ごめんごめん。強すぎたね!」という会話が周りから聞こえてきます。
 学術的に痛みを評価するにはVAS(Visual analog scale)が使用されております。特に痛みを主訴としている患者さんではこの評価を外すことはできません。しかし、臨床場面ではもっぱら“痛みの簡易尺度”を使用しております。患者さんも「痛い!痛い!」とばかり言うよりは、「何番!」と言ったほうが言いやすいようです。

 この痛みの簡易尺度はダイナミックスプリントのラバーバンドの牽引力を決める時にも使用しております。関節の拡大を目的に持続的牽引を加えますが、“弱い力で長時間”と一般的に言われています。牽引力の単位を“g”でなく“痛みの簡易尺度”としました。つまり、人によって同程度の牽引力では痛みを感じなかったり、逆に耐えられないほどの痛みであったりします。そうしますと、前者では牽引力が弱すぎた! 後者では強すぎた!ということになります。でも、痛みを牽引力の目安とした場合、はじめから3番であれば20分も持続して牽引されないことは容易に想像できます。ですから、はじめには1番くらいの牽引力と致しますと、徐々に痛みが増してきて1時間経過した頃には3から4番の痛みとなってきます。このような方法であれば患者さんも理解を得られ、持続的な牽引が可能となります。この内容に関しては以下の本に掲載されていますので参考にして下さい。

【参考資料】
阿部幸一郎、矢潔:手の外科・ハンドセラピィ.作業療法学全書[改定第3版] 第9巻 作業療法技術学1 義肢装具学.協同医書出版社,2009,pp.209-220.
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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