2013. 05. 24  
 若手の作業療法士にから、「手全体が硬い正中神経障害の患者さんのスプリントは、何を作ればいいのですか?」という質問がありました。前腕末梢の圧挫創で腱、神経の連続は認めたということです。

 彼は、患者の主訴が「つまめない」とありますので、母指対立保持のスプリントを作るということでした。でも、手指の拘縮が多数指にあるので先輩OTからは手指の拘縮を取り除くダイナミックスプリントが先決ではないかというアドバイスがあったそうです。

 ここでの私のアドバイスは以下のようになります。

 ○正中神経障害に対する考え方
 正中神経障害の予後予測が重要です。この障害手の正中神経障害は回復が望めるのかということです。神経の連続性の有無。有連続であれば軸索は再生しているのか。それを知るには、受傷創から経過日数に見合うTinel signの伸展位置、短母指外転筋のMMT、SWTを観ていかなければなりません。
 神経の連続性があったからということでSeddonの分類でaxonotmesisとは限りません。Sunderlandの4型では上膜内の瘢痕がバリケードとなり軸索の伸展を抑えてしまう場合があります。そのような場合は神経剥離では再生が不可能で瘢痕部を切除し再縫合しなければなりません。

 ○手の機能障害
 外傷ですので、正中神経障害以外の機能障害を評価します。
 浮腫・腫脹、熱感、関節拘縮、腱滑走、疼痛などです。この症例は他医からの紹介でStiff handの状態です。 先の正中神経障害を加味しながらの機能回復を図る必要が有ります。

 ○手の能力障害
 主訴は「つまめない」でありますが、主訴以外の握りや開排はどうなのか。
 正中神経障害でのつまめないというのは、運動障害からの母指対立運動障害とつまむ指、つまり母指と示指(中指)の知覚障害からくるものです。
 話が逸れますが、手根管症候群例でのつまみ動作の障害では、しびれや感覚障害が主原因である場合と対立障害が主原因である場合があります。意外に対立が悪くともつまみ動作の能力障害を訴えない例もおります。何が原因なのかを考えなければなりません。また、つまみ動作は、母指と母指に対向する示指や中指が不可欠です。示指や中指の機能障害の有無も観ていく必要が有ります。

 ○手術の必要性の検討
 経過に見合った軸索の伸展を認めない場合は軸索の再生はないものと判断できます。自分が医師であったらどのような手術をするかの考えてみます。神経剥離術のみとし二期的に対立再建とするのか。神経剥離と対立再建をするのか。対立再建の場合、力源とする筋は何か。何もしないのか。担当医の考えを得て、診方を学ぶ必要もあります。
 母指対立再建を予定するのなら、力源となる筋の筋力強化が必要となります。

 それまで、手関節、手指の拘縮は可及的に改善させておかなければなりません。その拘縮解除の手段の一つにスプリントがあり、そしてスプリンには目的があります。
 仮に、拘縮がなく正中神経障害による母指対立障害と知覚障害だけの場合の母指対立スプリントは有効です。しかし、手外科医が在籍する施設では対立再建が選択されるので、早期に対立再建するようであれば、対立スプリントは必要にはなりません。

 多種多様な障害手に向き合う場合、視野を広げて診ていく必要があります。
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2012. 09. 15  
 スプリントには静的(スタティック)スプリントと動的(ダイナッミク)スプリントがありますが、まずは静的スプリントを大切に作製することが必要です。

 動的スプリントは、静的スプリントをベースにアウトリガーを装着し輪ゴムによる牽引で拘縮を矯正したり、橈骨神経麻痺の指伸筋と手伸筋の代償をしたりします。ですから、静的スプリントの装着感が悪ければ動的スプリントは受け入れらなくなります。
 スプリント作製に関してのポイントはおいおい説明するとして、手関節や前腕の肢位決定はどのようにしているのでしょうか。若手が作製したスプリントを観るとここら辺が欠落していることがあります。

 静的スプリントを作製するに当たり手関節や前腕の肢位決定には段階的に3つの確認事項があります。
 適当に肢位を決定しているわけではありません。

 ①最優先されるべき病態からの決定
 なじみのあるものでは、屈筋腱修復後の症例に作製する背側型スプリントをイメージして下さい。
 このスプリントは縫合腱の保護を目的に手関節軽度屈曲から中間位、MP関節60度から70度屈曲位、IP関節伸展位で背側からそれ以上伸展しないように静的スプリントを装着しています。伸展制限をしませんと縫合腱は断裂してしまいます。
 症例は窮屈な思いで装着していると思いますが、症例のニーズを取り入れてしまったら縫合腱の保護にはなりません。つまりこれが病態を考慮しての角度設定なのです。ここではニーズよりも縫合腱の保護が最優先されます。

 手根管症候群の夜間用スプリントは、手関節中間位、前腕回外位です。
 夜間時のみの装着ですから就寝姿勢は前腕回外位です。手関節の中間位は手根管内圧が最も低い肢位となりますので、この中間位設定は外せません。
 本来ならば、正中神経の圧迫を考えますと日中の固定も推奨すべきですが、手根管症候群の症例は中年女性が圧倒的に多いので、家事動作や仕事などで手の機能が制限されますのでスプリント装着に抵抗を示します。
 日中装着できる方には、手掌を開けるように背側型のスプリントを選択します。
 私の経験では夜間時のみ固定例よりは、日中も含め可能な限りスプリント装着していた例が改善しておりました。ただ、患者さんには生活がありますので強制はできませんので、夜間のみ装着するのか、日中も固定するのかで掌側型か背側型かを決めています。

 ②①の病態を考慮しなくてもいい場合には、関節の生体力学と組織に加わる張力を考慮します。
 外傷後の手は浮腫・腫脹を呈してしまいます。そうしますとMP関節は伸展傾向となり側副靭帯が緩んだ状態となります。この緩んだ状態が長く続くと緩みが減少し緊張してしまいますので、MP関節の屈曲に制限が生じてしまいます。ですから、腫れている手の安静を図る場合はMP関節屈曲位となるようにスプリントを作製します。
 では、手関節をどの姿位で固定すればいいのでしょうか。
 答えは手関節背屈位です。
 MP関節を屈曲することにより手指屈筋は緩んだ状態となります。緩んだ組織は時間とともに緩みが減少し柔軟性を失ってしまいます。ですから手関節を背屈させ手指屈筋の緩みを帳消しにしておくことは、手指屈筋の筋性拘縮を少しだけでも防ぐことが可能となります。

 ③症例のニーズを考慮する。
 ①②での規定がない場合、症例のニーズを取り入れていきます。
 手関節の固定のみであれば回内外は固定にする必要がなく、掌側型スプリントやアルナガーター(尺側型スプリント)では回内外が制限されてしまうので、橈側型のスプリントを選択します。

 パソコン操作で手を使っていかなければならないのなら、回内位で採型する。手を使うということは対象に手掌が向かうということですので回内位となります。
 先述したように回内外の制限を嫌う方がたまにおられます。そうしますと橈側型のラディアルガーターが選択されます。
 つまみ動作が主となる作業であればやや橈屈位とし、握り動作が主であれば尺屈位とします。

 スプリント作製はartで、スプリンティングはscienceだと思います。
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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