2011. 12. 17  
 橈骨遠位端骨折の治療の考え方は、他の部位の骨折と基本的には同じです。良好なアライメントの整復と安定した固定が医師の仕事です。その後、医師の判断でセラピィの処方が出されます。事がスムーズに行けば良好な機能を獲得できるのですが、整復不足による変形治癒、固定の必要のない関節までの固定、無用な長期固定、セラピィへの処方の遅れなどが結果不良の原因となります。
 可及的な整復や強固な固定は医師のスキルが反映されますので、ここではこれ以上言及いたしません。

 我々セラピストが出来ることは、まずは早期に対応できる環境をまず作ることです。そのためには、カンファレンスや勉強会などで早期に対応する必要性、または対応出来ることを訴えておくべきです。骨折後、または術後の合併症対策の準備があることを強調しておくことです。ここら辺の意思疎通には時間を要することがありますので、日々のコミュニケーションが大切です。

 橈骨遠位端骨折で遭遇する合併症とはどのようなものがあるのでしょうか?
手外科専門施設以外の一般病院のセラピストでも多かれ少なかれ、橈骨遠位端骨折の治療経験はあるはずです。
 世間ではプレート固定が主流となっておりますが、プレート固定でも徒手整復でのギブス固定でも想定できる合併症は想定していかなければなりません。

 想定するということは予防につながります。

 必ずといってもよいのが手の浮腫です。長期間存在するということは何らかの不可逆的変化を手に及ぼすことを知っておかなければなりません。早期対応が拘縮や腱癒着の回避に結びつきます。

 受傷前は特に既往歴がなければ関節拘縮もありませんし腱癒着もありません。
 どうして拘縮や腱癒着が生じてしまうのか考えなければなりません。浮腫、疼痛、固定、内出血などなど。
 受傷後運動を入れないと容易に拘縮も癒着も生ずることを理解しておかなければなりません。
 これらを想定して予防するのです。

 強固なプレート固定では外固定をする必要がなく翌日からセラピィが可能です。手術操作で腱の滑走が制限されますが、滑走を入れていくことにより癒着は回避できます。疼痛があるので患者さんは積極的に運動したがりません。セラピストが忍耐強く寄り添っていくしかないのです。強い疼痛を避けながら愛護的に行なっていかなければなりません。

 徒手整復後の外固定例では、固定を要する手関節、前腕以外の関節の可動域と腱滑走の確保、浮腫のコントロールが必要となります。

 創外固定では牽引を加えているために筋の緊張が強くなるため、自動運動では拮抗筋の抵抗があり十分な可動域を得られないので、単関節ごと関節運動にて関節可動域運動を維持拡大していきます。

 そして、ここでも注意が必要なのが腱鞘炎由来のStiff handです。患者さんは一生懸命に指の屈伸運動をしてしまいます。それが腱鞘炎の原因になることは理解しておりません。腱鞘炎の徴候があれば自主トレーニング方法を再指導しなければなりません。

 橈骨の変形治癒や関節面のstep off、尺骨茎状突起骨折を伴うこともあります。これらが全て予後を悪くするというわけではありません。文献により様々です。わたしは日常生活や仕事で能力障害がなければ可動域の拡大にはこだわりません。
 極論ですが、手関節や前腕回外が制限なく可動するが痛みが伴う場合と、可動域制限があるが痛みが伴わない場合では、患者さんはどちらを望まれるのでしょうか?答えは、皆さん個々で考えてみてください。

 橈骨遠位端骨折のセラピィは特殊なものではありません。先にも述べたように早期に対応できる環境を作っておき、合併症を理解し予防策を講じることにより、手の機能は維持できるものと考えます。

 ロッキングプレートによる内固定により、以前見られた橈骨遠位端骨折後の悲惨な機能障害を残こす手は、今は見かけることがありません。ですから、予防対策を早期に講じ、早期に社会復帰させることがセラピストの役割だと思います。
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2011. 07. 01  
手指骨折のセラピィ
 骨折の治療原則は整復と固定となります。これは手外科領域に限られるものではありません。
 骨整復、整復後の固定が安定していれば良いのですが、徒手整復が困難であったり固定が不安であったりしますと手術が必要となります。
 また、プレートによる強固な固定はより早期のセラピィが可能となります。

 では、骨折のリハビリの目的は何をするのでしょう?

 骨折の合併症対策が基本となります。

 早期にセラピストが介入することにより合併症を最小限に留めることが出来ます。
 この合併症対策は骨折部周囲の解剖学的構造、受傷状態の把握、整復と固定の特長などを加味し、生じてくる合併症を想定し運動を選択しなければなりません。

 セラピィの対象となる合併症
 浮腫・腫脹、熱感、疼痛
 関節拘縮、腱癒着、筋性拘縮
 CRPS

 外傷や術後の炎症反応などにより浮腫、腫脹は必発です。これらを放置していますと拘縮や腱癒着が生じやすくなります。
 浮腫に対しては高挙手の指導が大切です。また、浮腫は損傷した指に限らず手全体に及びますので、非損傷指の運動を入れて浮腫の軽減を図ります。
 腫脹に対しては創部が不潔にならないような方法でのアイシングが必要です。
せめて、隣接指の拘縮予防を目的に早期にセラピストが介入出来る環境をセラピストが自ら働きかけて作っていく必要があります。

 拘縮の原因は多岐に渡りますが、不動の状態が長くなればなるほど強くなってしまいます。固定を要する関節と固定を要さない関節とを明確にして関節運動を入れていきます。自動運動も併用することにより、後述する腱の癒着も回避できます。

 腱癒着も同様です。骨の表面には腱床と言われる腱が滑走する面があります。この腱床が骨折により不整となり血腫に覆われてしまいますと腱癒着のリスクが生じてしまいます。癒着しないためにも早期からの腱滑走が必要となります。

 また、橈骨遠位端骨折後の長母指伸筋腱断裂に観られるように、リスター結節に骨折が及ぶ場合、機械的摩擦により皮下断裂が生ずる可能性もあります。このように腱が断裂する前には予兆となるサインがあります。リスター結節部の痛みと腫脹を見落とさないようにしたいものです。

 骨折整復後のセラピィでも見逃してはいけないのが腱鞘炎です。これは骨折の合併症というものではありませんが、繰り返される自動屈伸運動により発症する可能性があります。術後の手はどうしても浮腫が生じてしまいます。そのような状態下では腱鞘も浮腫をきたしているものと考えます。腱と腱鞘間での抵抗は高まり機械的ストレスが蓄積され、尚更、腱鞘の内腔が狭くなるのではないかと考えます。
 セラピストは、治療経過の中で生じるであろう問題点を想定して介入することが要求されます。想定できるかできないかでは雲泥の差があります。
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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