2017. 10. 07  
 おはようございます。
 先生のfacebookを拝見し、勉強させて頂いております。

 今年の○月から、急性期病院で働いており術後の整形疾患の方を担当する機会が増えました。これまで働いていた病院は回復期から維持期にあたる患者様が多く、上肢においては術後直ぐの方をみることがありませんでした。
 このため、複数の書籍を見たり、先輩方にも質問しながら知識を深めているつもりではいるのですが、分からないことも多く先生に連絡させて頂きました。お忙しい中、大変申し訳ありません。


 骨折に対する術後リハにおいて、先輩方からは自動運動から始めた方が良いと教えて頂くのですが、書籍をみると自動運動から開始しないといけないものや、他動運動から開始しないといけないものなど、なにが正しいのか分からず自分が患者様に不利益な治療をしてしまっているのではないかと不安でたまりません。
 術式により変わるのか、その違いをどう考えれば良いのかわからずご教示頂けないでしょうか。

 現在は○○骨折に対する観血的固定術後の方をみており、主治医に確認した際に運動制限はなく動かしていくよう指示を受け、自動運動から開始しておりました。なかなか挙上範囲が拡大せず、既に三週が経過しております。○○先生の書籍には他動運動から開始した症例があったことや、2日前のカルテに近位骨端の○転位と記載されていました。自動運動から開始したことがいけなかったのではないかと思い、今後の治療の留意点をどのように考え進めたら良いかご教示頂けないでしょうか。

 また、ハンドセラピーの勉強会に参加していこうと考えておりますが、参考とすべき書籍などありましたら教えて頂きたく、よろしくお願い致します。
 長文となり、申し訳ありません。




 ご質問、ありがとうございます。

 患者のために尽くすことは、最終的には尽くした自分の知識やスキルとなります。思い存分に悩んでください。打開策は必ずあります。

 観血的整復固定した症例ですね。
 
 そもそも、骨折の治療とはなんでしょうか?

 整復と固定、後療法ですね。

 後療法は術後の合併症対策です。
 外傷や手術により生ずる合併症は共通な点もありますが損傷組織固有の内容もあります。骨折であれば、骨の再転位、偽関節や遷延治癒などの病的骨癒合に関わる問題、関節可動域の制限、腱の癒着などの修復過程で生ずる合併症などがあります。

 医師からの指示に従ったリハビリで転位が生じてしまったのではないかと悩まれておりますが、ご自身はレントゲンや手術記録からどのような情報を得ていたのでしょうか。

 何でもかんでも医師の指示を仰ぐセラピストがおられますが、セラピスト自身は何をすべきか先ずは自分の頭で考える習慣を身に付けて下さい。
 全ての医師が具体的な後療法に精通しているとは限りません。だから、私達セラピストが専門職として必要とされているのだと思います。

 その専門職のセラピストが、自動運動をすべきか他動運動をすべきか、答えを見つけ出そうと文献を読んでいるようですが、後療法は外傷や手術内容により異なります。他施設の後療法をコピペするのではなく参考程度にして下さい。
 職場の先輩方はこれまでの医師との交流で自動運動と指導されたと思います。自動運動になった経緯を教授願ってみては如何でしょうか。


 で、もう一度、考えてみましょう。骨折の治療は何でしょうか?

 徒手的にまたは手術的に整復し、その整復位をしっかりと固定する。
 固定力が安定し運動に耐えられる強度であれば骨癒合が得られる前から運動を開始する。

 リハビリが処方される前に“整復”と“固定”が完了しているわけですから、整復不良や固定不足はリハビリの適応外と見なされます。固定が不良ですと偽関節や遷延治癒という病的な状態ですので、骨折部直近の関節運動は中止すべきですし再固定(強固な固定と骨移植)を検討する必要があります。

 リハビリは、術後に生ずるであろう機能障害に対し予防策を図り、生じてしまった機能障害にはリスクを理解した上での機能改善を図ります。

 こんな話がありました。
 ある学会主催の教育研修会で、ある講師が手指の可動域の拡大は自動運動で行わなければ関節を壊すとして他動運動を否定すると力説しておりましたが、その施設のセラピストは可動域の拡大は他動運動で行っておりました。これに対する説明は省きます。

 自動なのか他動なのかを悩むのではなく、自動(他動)運動を行う理由がありますのでその点を考えて下さい。マニュアル的な論文を探すのでなく解剖や病態、術式、創傷治癒などの知識を修得することにより後療法内容を自分で考察できるようになります。
 
 参考書籍はたくさんありますが、石黒隆先生が共著している「整形外科プライマリケア ハンドブック」は一読していた方がいいと思います。

 情報が限定的ですので具体的な症例指導は出来ませんが、答え探しでなく、自分で考察できるように文献を読んでみて下さい。若い時に年間3ケタの数の論文は読まないと一人前にはなりません。
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2017. 10. 05  
 痺れについて

 こんにちは。HP見させていただいており、参考にさせていただいています。
 今回は相談があります。

 手関節より遠位5cmあたりでの正中神経切断、縫合術後半年の方です。tinel徴候は切断部より変化ありません。痺れが正中神経領域全般に強く残り、金属や凹凸、振動に対し強い不快感が残存しています。このようなしびれや不快感を軽減するセラピィはありますか。主婦の方で料理や裁縫時に苦労されています。現時点では道具の素材変更などの対処法指導となっております。また、主治医よりリリカ処方となっていますが、効果は疑問があります。

 急な質問で申し訳ありませんが、アドバイスいただければと思います。よろしくお願いいたします。



 ご訪問ありがとうございます。

 正中神経切断で神経縫合後半年経過した症例ですね。
 約180日経過ということは、Tinel signは180㎜末梢に移動していなければなりませんが、切断部にあるということです。

 断裂した部位はMixed nerveですので、運動神経と知覚神経の機能障害がどれ位か評価する必要があります。

 物事を進めていく上で重要なのが“第3者が理解できる客観的な評価”です。

 正中神経の断裂、神経縫合、180日経過という情報は得られておりますから、軸索が末梢に伸びて機能しているかどうかを評価する必要があります。

 Tinel signは知覚神経の軸索の再生を診る誘発検査です。再生していれば手掌から指の範囲に認められなければなりません。
 運動機能は短母指外転筋のMMTを測定します。予測としてはMMTで1から2-くらいですか。
 知覚機能はSWTを測定します。予測としては正中神経支配の手掌で「防御知覚脱失」になっていると思います。

 揃えられる資料を持って主治医に相談してみて下さい。
 神経の再断裂はありえないお思いますので、恐らく神経腫が形成されていて腱や周囲組織に癒着しているのだと思います。
 CRPSⅡの症例ではこのような例を認めることがあります。

 運動と知覚機能障害によっては、神経剥離または神経移植が必要になります。

 早めに対応して方向性を決めていく必要があると思います。
2017. 09. 16  
 手根菅症候群術後の手関節痛

 初めまして。京都の病院で働いてる者です。
 手根菅症候群の手術後1ヶ月で手関節痛が生じている患者様のセラピ?についてご相談があります。
 物を持つ・包丁で切る(調理師であるため)と豆状骨や月状骨周辺に痛みがあります。(圧痛+)また、尺骨茎状突起にも圧痛があります。
 軽度の熱感や腫れがある為、アイシング(20分)と可能な限りの安静(たまたま本人が持っていた母指と手関節を固定するサポーター(母指とう側外転位・手関節中間位)、手首を固定したADLや仕事での動作指導をおこないました。(包丁で切るときに肘関節の屈伸を使うなど)
 作業療法士は私しかおらず、相談することが難しい状況だったため、相談のコメントを送りました。
私が行った対応てもあっているのか、それ以外でも確認や対応をした方が良いのか教えて頂ければ幸いです。
宜しくお願い致します。




 ご訪問ありがとうございます。

 手根管開放術後の手根部の疼痛でよろしいでしょうか?

 手根管開放術後の合併症の一つであるPillar painと思われます。
 発症機序には諸説がありますので、ご自身でも調べて下さい。
 職場でOTが一人で相談できないと述べられておりますが、術後の合併症ですので執刀医(主治医)はどのように考えているのでしょうか?術前の説明、術後、特にこの疼痛に関してはどのように患者さんに説明されているのでしょうか?このような場合、医師と足並みを揃えていかないと、執刀医とセラピスト間とで説明が異なると混乱を招きますので要注意です。

 手根管開放術なので基本的に手術後の合併症を考えて下さい。
 腫脹、熱感、浮腫、関節可動域の制限、腱滑走制限など、いくつものの術後の合併症を想定していかなければなりません。
 熱感に対してのアイシングはよろしいと思いますが、固定に関しては今一度考えてみて下さい。手関節の可動域は問題ないでしょうか?締め付けによる浮腫は大丈夫でしょうか?浮腫手で作業すると腱鞘炎を招く恐れがあります。腱鞘炎対策はされておりますか?
 手根管開放術後なので、正中神経の滑走は保たれておりますか?

 Pillar painに関しては、横手根靭帯を切離して急に手根骨の配列が広がったために生じた痛みであれば、手根管を閉じるよう操作を加えて疼痛が変化するか確認します。
 瘢痕部の圧迫による痛みであれば超音波が有効な例もあります。

 Pillar painはある一定期間が過ぎると緩和するとの報告もありますので、作業時の疼痛を回避する工夫も検討されるとよろしいかと思います。
2017. 07. 01  
件名:剥離手術の件

 何度もしつこく申し訳ありません。
 最初のお返事ではリスクが高いのに、なぜ手術をしたいのかと言われているようなニアンスでとってしまっていました。でも昨日のメールを拝見したところ、良い病院と良いセラピストさえいれば良くると言うことでしょうか?

 ただそうは言っても、私たち素人には、せいぜいインターネットで実績や口コミを見ることぐらいしかできません。
 実際に今回もインターネットで探し〇〇大学病院の手外科の先生に手術をして頂き、その後の経過が良くなかったのでセカンドオピニオンで多くの実績をもつとの○○の○○先生を訪ねました。
 そこでも、当初は紹介状がなければ診ていただけないとか他の病院で手術をしている患者さんは一般的には受け入れはしていませんとの事でしたが、知り合いの先生に何度も頭を下げて、ようやくその先生を通しリハビリを受けられるようになった次第です。それでも実際には自分が希望するリハビリの先生にはついては頂けなかったりで週 2回仕事を早退させて頂き職場から病院まで片道2時間、病院が終わってから家まで1時間半かけて半年間通いましたが納得のいく結果が得られていません。残念ながら多くの人は良い先生やその後の確実なリハビリを受けられる病院を見つけることも大変難しく、更にその中で希望する先生に担当して頂けることなど本当にラッキーな人は一握りだと思います。

 でも、少しでも希望が持てるのであれば。
 もし、情報をいただけるのであれば、良い先生とその後のリハビリを確実にしてくださるセラピストさんがいらっしゃる病院を教えて頂きたいのですが。
 ○○県の○○市に在住します。術後リハビリに通院可能な場所が好ましいです。私自身がイ ンターネット上で探した中では、手外科の先生で実績を積まれているのは、このお二方でした。
 そして作業療法士の先生となると、これはなかなか普通の人では、情報もなくわかるものではありません。もし情報がいただければ幸いなのですが先生の立場上、難しいでしょうか。
 交通事故での扱いと言うこともあり治療が終了と言うわれる前に自分自身、納得のいくお話を伺えるところがあればと思います。
 本当に失礼なメールを毎日送ってしまい申し訳ありません。

 件名:追伸
 現在の先生がリスクがあると言う理由に、はじめに手術をした先生のそれぞれの感覚の違いと言うものがあるので、縫い方や強度は実際に開けてみないとわからないことであり剥離をすることによって緩みが出てしまうこともある。その場合、物が掴みづらくなると言うことも起こり得ると言う説明でした。
 それに対して手術をした先生は、この先ずっと使っていく中で多少の緩みが生じてくるのでその分も計算して強めに縫い付けてあるとお話ししていました。しかしながら剥離をすると言う事は、また癒着が生じると言うことで、よほどのリハビリが必要になり場合によっては今以上、不自由になることが予想されるので僕は手術をすることは勧めないと言っておられました。かなりリハビリを頑張っても多少の癒着は避けられないと言うことで劇的に変わると言う事はまずないとおっしゃっていました。後は今の現状に自分が慣れていくしかないのだと。




 再再訪問ありがとうございます。
 先ずは、活字のみでの情報提供ですので実際に見せて頂かなければ現実的なお話が出来ないことをご理解下さい。

 私は現状より機能を上げるためには覚悟が必要だと思っております。
 医師もセラピストも、そして、患者さんも。

 「手術すればよし!」とは考えないでください。
 手術後には動的な創傷の治癒過程があり癒着は避けきれません。癒着を最小限にするために後療法(セラピィ)をしっかりと行う必要があります。術後の手厚いリハビリです。
 ですから、癒着が完成してからリハビリを長期間行っても限界があります。

 通院しやすい医療機関の紹介を希望されておりますが、全ての条件が整うとは限りません。
 何が優先されるのか考えて下さい。手を治すなら仕事を調整する必要がありますし、仕事の調整が出来なければ手術はしない方がいいと思います。“何もしない選択肢”ですので何も変わりませんが後退もしません。
 治療に専念できるかということであり、仕事をしながら治療に専念することは十分ではありません。

 手術後の手は外科的操作による合併症が生じます。その合併症対策がハンドセラピィと言っても過言ではありません。通院が出来ないからと言って自己管理として責任転嫁するものではありません。やはり専門家であるセラピストが管理すべきと私は考えております。ですから、Mさんが今後手術をするならば待機手術ですので仕事を調整し一定期間治療に専念してほしいのです。

 覚悟があるようでしたらお知らせください。受診をして頂く医療機関をお知らせいたします。
 ブログを通してのやり取りはこれで終了と致します。次回はMさんに直接メール致します。
2017. 06. 26  
:腱剥離手術の件
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 お忙しい中、早々にご丁寧なお返事ありがとうございます。
 端折った説明でしたので詳しく伝わらなかったかもしれません。

 実は〇年〇月右手首を骨折。治癒して通院終了になった矢先に、・・・略・・・腱を断裂してしまいました。
 最初に受診した病院ではレントゲンで所見がないので、痛い痛いと言っていたにも関わらず親指も動かないと訴え続けるも、ただの捻挫と診断され1ヶ月経過。
 心配でたまらず〇病院の手外科の先生へ。年末のギリギリでしたが即、手術をしていただきました。術後は、腫れと手のツヤ感が一向に治らず再断裂の心配もあると言う事から、ひと月近く固定をしておりました。しかし固定を外した後も自分でリハビリを頑張るようにと言う事だけで、治療を終了されそうになったので、少しの期間で良いので、きちんとしたリハビリを受けさせてほしいとお願いし、週2回〇の方に手のマッサージをしていただいていました。
 しかし・・・略・・・専門的に手のリハビリが出来る作業療法士さんのいる病院を紹介していただきました。そして、〇月の後半からその病院で作業療法士の方に・・・略・・・リハビリを受けるようになりました。
 担当は、・・・略・・・でした。ただ腫れやしびれはすっかり良くなっています。
 長くなってしまいましたが、こんな経過があり結局、今見てくださっている先生は手術をした先生ではないので「自分がやった手術ではないので賭けのようなものだ。」とおっしゃっています。(先生そのものは、かなり腕のいい先生だと言う評判ではありますが。)
自分自身、納得がいかないので手術をしてくださった方の先生にもお話を伺いましたが、〇病院の先生のほうは「よほどのことがない限り、剥離の手術は私はしません。全く動かなかった指が曲げ伸ばしができる様になっただけでも、十分じゃないですか。多少不自由はあるかもしれませんが後は、それに自分が慣れることです。」とおっしゃっていました。
 どちらの先生も選択肢としては剥離手術もありますが、やらない方向でいいんじゃないんですかといった感じでした。
 私も仕方がないのかなぁとは思いますが、手の甲の癒着部分を左手でつまみ上げると面白いほど気持ちよく右の親指と人差し指が動くので何となく諦めきれないでいます。一生この手と付き合っていくのかと思うと時々悲しくなります。
 毎日、午後には疲れて手首から肘にかけての筋の痛みが出たりするので辛かったりもしています。
 来月もう一度だけ受診をし、そこで終了にしましょうかと今の担当の先生がおっしゃっていました。その際、もう一度リスクについてお話を伺ってみようと思いますが、阿部先生のメールを拝見したところ、やはりそれなりのリスクも大きそうですし先生のような熟練された沢山の経験のある作業療法士さんがついていて下さるなら別ですが術後の再癒着もかなり心配ですので(今以上に不自由になってしまうともっと困るので) このまま慣れるしかないのかなぁともちょっと思い始めています。何分、利き手なので。
わかりづらい文章で申し訳ありません。



 詳細なご返信ありがとうございます。
 私には他の医師が手術された手を手術しない理由がわかりません。

 他医から紹介された長母指伸筋腱の再々断裂例に対して、私が勤務施設の医師による再々縫合後のセラピィを経験しましたが健側と同等の腱滑走を獲得しております。

 確かにリスクはあると思いますが、痛みがなく動きが悪い手でしたら慣れるのでしょうが、動きが悪く痛みもある手であれば慣れないのだと思います。

 私は多くの症例を診てきて、究極は“痛み”と“しびれ”を取り除くことだと思います。
 腱剥離と確実なセラピィを提供してくれる医療機関を探した方がいいように思います。

HAND maintenance studio
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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