2017. 06. 25  
件名:腱剥離手術について

 もっと早くこのブログに出会えていたらと思います。
 なんと腱が断裂しているにもかかわらず、通院中の医師からは捻挫と診断され別の医師にかかるまで1ヵ月以上放置されてしまいました。
 右手の親指の伸ばす方の腱が断裂していました。
 昨年暮れ急いで人差し指からの腱移行術を受け、その後、作業療法士によるリハビリを週2回半年間続けてきましたが、癒着がありつっぱり感が辛い状態です。
 何とか親指と小指はくっつくようになり、親指と人差し指で物も摘めるようにはなりましたが、ちょこっとした動作でも凄く指が突っ張ることがあります。例えば小銭入れから小銭を取るとか、その小銭を自動販売機に入れるなどの作業はとても不得意になってしまいました。
 医師からは半年間リハビリを続けてきたが、これが限度だと言う話です。
 残された選択肢は、剥離との事ですがリスクと天秤にかけたら動かない指がこれだけ動くようになったのだから、後は不自由を他で補いながら慣れていくしかないと言われました。
 ただ、リスクを覚悟で手術を受けるのであれば、良くなることも無きにしにあらずと言われ、とても悩んでおります。剥離手術をするのであれば、今の段階でやらなければいけないと言われていますが、自分では判断しきれないのでアドバイスをいただきたいと思いご迷惑かと迷いましたがメールをさせていただきました。



 ご訪問ありがとうございます。
 非常に悩んでいる様子ですが、手術を受けるためには大いに悩むべきです。
 担当のセラピストはなんと言っているのでしょうか?
 患者さんの不安を払拭するのもセラピストの役割です。腱剥離後のリハビリはセラピストとMさんの共同作業となります。セラピストの考え方が術後成績に大きく影響されます。

 長母指伸筋腱の皮下断裂に対して示指伸筋腱の腱移行術は一般的な再建方法です。

 腱縫合後の癒着は極自然な成り行きです。癒着すると機能障害が著しくなり、Mさんのようにつまみなどの能力障害を被るためにリハビリにて癒着を最小限としなければなりません。

 Mさんの縫合した腱は腱癒着しておりますので腱癒合は確実に得られているものと思われます。
 癒着した腱には毛細血管が入り込んでおりますので剥離するということは毛細血管が切れて出血します。主要な細い血管は焼きますが全てを焼くことは出来ません。出血した血液は血餅となり腱の滑走の妨げになり腱の滑走を十分に行わないと癒着してしまいます。徐々に出血はしなくなり吸収され再癒着のリスクも減ってきます。それまでの間、しっかりとリハビリをしなければなりません。腱剥離後の2から3週間が勝負だと思って下さい。拘縮があれば別ですが腱に限っては長期戦ではありません。

 腱剥離の際の腱の状態がとても重要です。
 一般的に剥離後の腱の状態が健康的であれば再断裂の心配がなくセラピィを頑張ることが出来ますが、不健康であれば再断裂の可能性があります。

 つまり、腱剥離の一番のリスクは再々癒着であり、次に縫合腱が不健康であれば再断裂です。

 剥離するのは医師であり再々癒着しないようにするのは患者さんとセラピストです。セラピストは剥離腱の操作を理解して腱滑走を施し患者さんに自己管理(自主トレ)方法を指導し励まし不安を取り除きます。これらのどれかが不十分ですと剥離した腱は癒着します。
 私は担当セラピストの強い後ろ盾が必要だと思っております。

 

 最後に、Mさんの腱移行後の腱癒着に対する剥離で、なぜ、それほどまでリスクを覚悟で手術しなければならないのか不思議です。何がリスクなのかを分かりやすく確認したすることをお勧めいたします。

 何かありましたら、再度訪問して下さい。
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2017. 06. 07  
 件名:前回ご質問させて頂いた患者さんについて。
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 3月に腱鞘切開術をされた患者さんのことについてご質問させて頂いたものです。
 ご丁寧にお答え頂き、ありがとうございました。

 前回ご質問させて頂いた患者さんについてですが、阿部先生のご意見を参考にさせて頂いて、今現在は腫脹や発赤が出現しなくなり、肘関節内側の叩打痛や術部周囲(中手骨頭)と示指の痺れが消失しました。
 手指の可動域制限は現在は見られておらず、自動運動も行いやすくなってきました。

 しかし、術部である、示指の腱鞘部(中手骨頭)の圧痛が現在も持続している状態です。手指を屈曲する際は、自動運動でも他動運動でも疼痛は出現せず、伸展運動では、最終域のほうで圧痛のある部位と同じ部位に伸張感と違和感があるという訴えもあります。
 圧痛や違和感がある部位は、触診すると硬くなっている感覚があります。
 私は、術部が治癒過程であり、腱の滑走がうまくいっていないのではと考えております。

 患者さんの現在の主訴としては、圧痛があるために、何か物を持つ時や手を着いた際に術部が当たるって出現する痛みを失くしたいとのことなので、よろしければ、阿部先生のご意見をお聞かせ頂きたいと思っております。

 よろしくお願い致します。



 ご訪問ありがとうございます。
 2017年3月27日の「訪問者への返信」のブログですね。
 改善傾向にあり嬉しく思います。
 やはりセラピストの喜びは患者さんの機能改善、症状改善ですね。
 

 文面から、
 「手指の可動域制限は現在は見られておらず、自動運動も行いやすくなってきました。」とありますので、腱の滑走には問題はないように思います。

 考えられるとしたら、化膿していたことによる過剰な瘢痕形成だと思います。
 すでに慢性期になっているようですので、健側と比べてMP関節の過伸展が制限されているようであれば持続的な伸長が必要だと思います。また、超音波治療器があれば伸張前に施行した方が望ましいです。

 可動域制限がなければ創部の閾値の低下が考えられますので、自制内での圧刺激を入力していき、慣れてきたら(閾値の上昇)徐々に圧刺激を挙げてみて症状の変化を確認して下さい。

 私自身も腱鞘切開を行い術後の痛みが持続しておりましたが「ヒルドイドソフト」で寛解しております。
 担当医と相談してみて下さい。
2017. 05. 04  
 件名:右肘痛に悩んでいます
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 はじめまして。

 右肘痛が治らず、現在行なっている治療が合っているのか心配になり、ご連絡させていただきました。
 卓球を職業としており、1ヶ月ほど前に試合中に右肘に痛みを感じましたが、そのまま試合を続行しました。
 その後、中指を動かした時や手のひらを上方向に動かした時、夜間寝ている時も痛み、時に痺れているように感じています。

 次の日、上腕骨外側上顆炎と診断され、2度の注射を行い、先週、MRIでECRB断裂と診断で体外衝撃波をレベルマックスで受け、その後5日間安静日間しました。
 主治医に痛みは引くはずなので、今週、練習は再開してもいいと言われましたが、なかなか痛みが変わりません。
 このまま練習再開してもよろしいでしょうか?
 来週に試合があるため、なんとか早くプレーできるようにしたいと考えております。
 この治療法でよろしいでしょうか?
 また何かよい方法はありますでしょうか?

 お忙しい中、申し訳ございませんが宜しくお願い致します。



 返信が遅くなりました。
 アスリートの方には時間的ゆとりがないのが一番の問題です。

 体外衝撃波治療の経験がありませんので調べてみました。
 
 体外衝撃波治療には二つの目的があります。
 一つ目は、痛みを発している病変部の自由神経終末を破壊しての除痛効果です。自由神経終末は痛みを感ずる感覚受容器です。この受容器の機能を壊すことにより痛みを感じさせなくします。

 二つ目が、腱の修復(再生)です。衝撃波により損傷部には新たに毛細血管が伸びてきて損傷組織を修復してくれるようです。

 衝撃治療は複数回行われるようですが、除痛効果は1回目の照射から認め、その後、徐々に軽減するようです。


 そうしますと、M.T.さんでは除痛効果が得られていないようです。
 除痛効果が得られない理由を考えなければなりません。

 衝撃波の照射部位がずれていて自由神経終末が破壊されなかった可能性と実は外側上顆炎でなく別の類似疾患の可能性が考えられます。

 外側上顆炎では、まずは装具療法が選択されると思います。肘外側のECRB起始部の負荷を軽減するためにテニスバンドを装着します。また、前腕伸筋群のストレッチや筋力増強の併用も必要と思います。

 稀ではありますが、この外側上顆炎との鑑別の一つに橈骨神経由来の疼痛も考えておく必要がります。「夜間寝ている時も痛み、時に痺れているように感じています」とあり神経性の疼痛を疑ってしまいます。


 再診して効果がないことを相談するか、セカンドオピニオンとして他施設の医師に相談されることをお勧めいたします。
 痛みは身体から発せられる警告だと思います。痛みを無視しての運動継続は避けるべきです。
2017. 03. 27  
 ブログ拝見させて頂き、大変勉強になります。
 難渋している患者さんがおりまして、質問をさせて頂きたいと思います。
 他院にて腱鞘切開術(右示指MP関節掌側)を行った方で、術中より痛みを徐々に感じたようで、術後は、腫れや痛みが広範囲に出現したとのことでした。
 2週間後、抜糸したのですが、化膿しており術部に膿が溜まってしまったようです。抗生剤をその後2週間行いましたが効果なく、薬を変えて再び2週間行った所状態が良くなり、抗生剤を終了されたようです。
 しかし、2か月間変化がなく当院に受診されリハビリのオーダーがありました。リハビリはなかなか進まず、示指の腱を軽く押すだけで徐々に腫れが出現し、冷やすと痛みが増すとのことでした。また、橈骨動脈を圧迫すると術部周囲に痺れが出現しました。日常生活では、水など冷たい物をふれると肘内側に強い叩打痛を覚えるとのことです。旦那さん、息子さんにサポートをしてもらいながら過ごしています。茶碗洗いなどの動作後、術部が赤黒く腫れ、手指まで動かしにくくなるそうです。リハビリは、軽い可動域EXだけを2回行っただけです。最近は、ノイロトロピンという薬で症状が緩和・消失してきました。



 ご訪問ありがとうございます。
 難しい症例ですね。腱鞘切開出後に感染されたということから、腱癒着は広範囲なものになっていると思われます。腱癒着のみであれば痛みや叩打痛は生じません。指が動かない、硬いといった運動障害が中心になると思います。

 神経性疼痛が二次的に生じているように思います。橈骨動脈のすぐ尺側は橈側手根屈筋腱、その隣には正中神経が走行しており、正中神経の何らかのストレスによるしびれなのかもしれません。

 茶碗洗いで手が腫れて動かしにくくなるとあります。多くの方は茶碗を洗う際にはお湯を使いますので手も暖まります。血管が拡張しての腫脹が増悪しているのかもしれません。また、茶碗洗い動作が下垂手となるため浮腫が増悪しているのかもしれません。
年齢が不詳ですが「旦那さんと息子さんにサポートしてもらいながら」とありますので、50歳前後でしょうか。閉経期の女性、腱鞘炎、手の腫れとなれば手根管内圧が高まっての手根管症候群も推測されます。

 冷たいものに触れると肘内側に叩打痛とあります。肘内側は尺骨神経が走行します。冷たい物に触れて筋緊張が増して尺骨神経に圧迫が入るのでしょうか。

 色々と推測できますが、腱鞘切開術後の感染では、浮腫と腫脹、関節拘縮、腱癒着が想像できます。浮腫は高挙手を徹底させ、腫脹は熱感を併発しますので20度の水温で冷却します。冷やすと痛みが増すとありますが、今の時期の水道水は15度前後ですので冷たすぎます。熱感があれば冷却をお勧めしますが、逆に冷たいようでしたら体温位の温水(36度)で温めて自制内の関節可動域を健手で行わせるのが無難に思います。

 情報が限定的なのでこれ以上はお伝えできません。
 症例の主訴。浮腫と腫脹・熱感。示指、手関節などの自他動の関節可動域。しびれや感覚障害の範囲。疼痛部位などをお知らせいただければ、もう少し踏み込んだアドバイスができるかと思います。
2017. 01. 09  
 神経損傷についてわかりやすくまとめて頂いていて大変助かっております。1点わからないところがありましたので、教えてください。

 最後の下線部に

 つまり、受傷直後であれば応答収縮を認める可能性がありNeurotmesisと判定してしまいますので、必要あれば10日後に再度検査する必要があります

とありますが、受傷直後に応答収縮が認められる場合はNeurotmesisでは無く、Neurapraxiaという理解で正しいでしょうか?

お忙しいところ恐縮ですがよろしくお願いいたします。




 ご質問ありがとうございます。
 2010年12月10日のブログ記事ですね。

 NeurotmesisとAxonotmesisは軸索断裂、Neurapraxiaは脱髄です。軸索断裂では断裂部位(損傷部)より末梢でWaller変性が生じます。このWaller変性は断裂直後にぱっと変性するものではなく10日前後の時間を費やし変性すると報告されています。 つまり、軸索障害直後はNeurapraxiaと同じように応答収縮が生じます。
 NeurapraxiaでもNeurotmesisでも受傷直後は受傷部より遠位部では支配筋の応答収縮が認められます。時間の経過によりWaller変性が完成し応答収縮が認められなくなるのがNeurotmesisです。


 ある前骨間神経障害例です。
 発症翌日に受診されました。長母指屈筋、示指の深指屈筋のMMTが「0」でしたが、長母指屈筋と方形回内筋の複合筋活動電位は導出されました。しかし、2週後には複合筋活動電位の振幅幅が低下しており、伝導ブロックと軸索障害が合併した状態と判定できました。
 この2週間にWaller変性が生じ振幅幅が低下し、軸索再生には時間を要するだろうと推測できます。


 もう少し説明をすると、
 以前に読んだ文献でマッチ棒の太さの神経幹内には1000本の軸索があるとのことです。出所が不明ですので参考までにしておいて下さい。
 この1000本の軸索が全て断裂し変性するとは限りません。混在する不全麻痺もあります。
 ちなみにNeurapraxia、Axonotmesis、Neurotmesisは、軸索1本の状態を示しておりますので1本の神経幹を指しているものではありません。

 神経幹伝導検査は応答収縮を視診するので客観的な数値は出せませんが、複合筋活動電位を導出できない環境にいるセラピストにとっては力強いツールの一つです。
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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