2016. 12. 13  
 手根管症候群のop後の患者さんについて教えてください。

 手根管症候群で確か3年くらい前から母指~中指にかけて痺れがあり、先生から勧められて手術をしました。
 術後痺れからこわばりに変わり、母指~小指に拡大、表在感覚はありますが深部感覚鈍麻。
 最近はこわばりは強くなり痛みもあると言います。
 本人の話では術前は痺れのみでADLに何の問題もなかったが、術後は箸を持つとか何かをつまむ、蓋を開ける、下着のホックをつけるなどいろいろな巧緻動作ができなくなってます。
 特に右手の対立運動や、虫様筋が弱化しててMMT2レベルです。左は4くらいあります。

 先生は、術前も深部感覚や対立は弱くて術後悪くなってるとゆうより変わってない、とは言ってます。
 ただ手術の記録では右の正中神経はかなり細くなってた的なこと書いてます。

 このこわ張りは今後治ってきますか?



 ご質問ありがとうございます。

 手根管症候群(CTS)に対して手根管開放術を施行し、術後にこわばりが生じてしまったという症例のようです。
 
 このこわばり感は腱鞘炎によるものと解釈できます。CTSに腱鞘炎が合併するという報告は多々あり、自験例ではCTSに6割に合併しておりました。
 また、術後の合併症として浮腫や腫脹を呈している手で自動運動を繰り返して行うと腱鞘炎を発症ないし増悪させますので、他動運動によるROMの拡大を図るべきです。

 手術前から発症していた腱鞘炎なのか、手術の合併症として結果的に生じてしまった腱鞘炎なのかは分かりませんが、腱鞘炎を鎮静化していかないと、腱鞘炎由来のStiff hand(硬い手)となり、不可逆的な拘縮手となりますので注意して下さい。

 腱鞘炎が沈静化するとこわばり感も消失します。腱鞘炎には繰り返される自動運動と温熱療法は禁忌ですので注意して下さい。

 浮腫に対しては高挙手、腫脹や熱感に対してはアイシング、ROM制限は愛護的に他動運動で徐々に拡大して下さい。運動による痛みの誘発には十分に注意を払って下さい。恐らく手指屈筋腱の滑走の制限が生じていると思いますので滑走の拡大も図るようにして下さい。

 正中神経に対しては神経滑走運動により滑走の拡大を図って下さい。

 最後に、「こわばりは今後治ってきますか?」とありますが、治療者が治るように誘導しなければ治るものも治りません。病態に即したプログラムを立案して下さい。
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2016. 11. 11  
 Subclinicalとは、器質的に障害はあるものの、臨床的に症状を呈していないと定義されます。
 つまり、自覚症状はないけれど、他覚的所見を認めるということです。


 手根管症候群が疑われると神経伝導速度検査で神経の伝導状態を確認します。
 検査は通常両手で行われます。その際に、しびれていない側の手に異常所見を認めることがあります。しびれという自覚症状は無いのですが、手根管症候群の重症度の一指標となる短母指外転筋の終末潜時の延長を認めますので、Subclinical CTSと診断されます。
 Subclinical CTSと診断しても積極的には治療しません。夜間痛や起床時のしびれという自覚症状が生じはじめたら受診するように勧める程度です。


 手術後、後療法を開始して間もなく腱鞘炎が発症する例を経験します。このような例はけっして少なくありません。
 これまで術後に腱鞘炎を発症する例は、リハビリと称して頻繁に自動運動を繰り返した結果と解釈しておりました。リハビリを処方するとすぐに腱鞘炎を作ってしまうとまで言われた時期もありました。

 術後すぐに腱鞘炎を認める例を経験したことから、Subclinicalな腱鞘炎によるものではないかと考えるようになりました。
 多くの例で非手術側の手にも腱鞘炎所見を認めることが出来ます。
 潜在性に腱鞘炎があり、外傷や手術による手の浮腫や腫脹が腱鞘にも波及し腱鞘内腔が狭窄し腱滑走により腱鞘がしごかれ、腱鞘炎が発現されたのだと思います。


 橈骨遠位端骨折後のリハビリでの遅発性に正中神経障害を呈する手根管症候群も、Sub-clinicalな腱鞘炎ないし手根管症候群の結果の症状発現と考えられるのではないでしょうか。


 そうしますと後療法を進めていくうえで術後の合併症対策とリスク管理に加え、Sub-clinical対策も必要になるのだと考えます。
2015. 12. 10  
OTの訪問者各位

 私が務めております八王子の病院でOTを募集しております。
 経験は不問です。目標を持って日々の診療に携わる方を望みます。
 詳しくは、右欄にあります『ご意見はこちらから』から①氏名②現勤務地③OT経験年数④メールアドレスを送信して下さい。
 ご連絡を頂きましたら、私からご連絡を差し上げます。

阿部幸一郎
2015. 07. 01  
 手に限らず運動器疾患では、リハビリを通して自分の身体機能の障害を理解し、どのように取り扱うべきかを学ぶ必要があります。その取扱い方の一つに自主トレがあり、正しく理解し正確に実行できることが望まれます。

 人は自分自身の生活を快適に過ごすために身体の機能障害や能力障害を克服し生活の質を高める努力をすべきであり、自主トレとして時間と労力を費やす必要があります。また、症状固定の状態であっても機能低下の回避、代償機能の強化方法なども知る必要があります。

 自主トレを継続的に実施するは、痛みの軽減、しびれの軽減、関節可動域の拡大など、機能障害や能力障害が改善することへの期待があり、この効果を得ようという欲求が自主トレ継続となります。効果を確実なものにするためには、より専門的な知識が必要でありセラピストによる指導が重要であることは理解できるものと思います。

 しかし、予防としての行う運動では症状の実体験がないため継続した運動は難しいように思いますが、第三者の身体的な機能障害を観ることにより自分に生ずるかもしれないということで実施可能な場合もあります。太っている人を見て、太らないようにランニングをするとか、姿勢が悪い人を見て、筋トレして健康的な姿勢を維持するなど。

 同じ予防でも再発の予防では実体験が既にあるため、痛みやしびれが強く、回復に時間を要した方では継続的な運動は期待できます。

 自主トレを日常的に遂行して頂くためには、病態を分かりやすく説明すること、手の届きそうな目標を提示すること、運動内容が対象者にとって現実的であり、単純、容易あることが大切だと思います。

 また、指導後は適時、運動内容を確認し、少しでも自主トレによる効果を認めたなら褒めることも必要です。

 手外科領域の自主トレのメニューには、浮腫の改善、腫脹や熱感の改善、関節可動域の拡大、腱滑走運動、神経滑走運動、脱感作、装具療法、ADLでの手の使用などがあり、対象者によって内容は異なります。

 特に手外科領域では高挙手の徹底は最も重要です。初診時に高挙手による自他動運動にて浮腫の軽減に伴う皺の出来具合を確認し高挙手の効果を確認してもらいます。
 
 腫脹や熱感にはアイシングを施します。私が手外科領域の患者さんを診る際に特に注意しているのが腱鞘炎の存在です。放置すると腱の通過障害を来してしまい痛みや関節拘縮の原因になります。開放創がなければ洗面器に入れた20℃位の冷水で10から20分間冷却します。湿布を使用するより効果的ですので、就寝中や外出時は湿布、自宅であれば冷水と使い分けて指導しております。

 関節可動域の制限に対しては他動運動での可動域拡大が基本となります。他動的に得られた角度を自動的に保持します。繰り返される手指の自動屈伸運動は腱鞘炎が生ずる可能性がありますので私はやらせておりません。
 意外にMP関節の過伸展の拡大はされていないようですが、A1プーリーのストレッチという意味では自主トレメニューでして頂くことの多い運動でもあります。
 対側の手での屈伸運動、スプリント療法にて可動域の拡大を図りますが、まずは単関節の運動からはじめ多関節運動と変化を持たせます。

 自動運動での保持は腱の滑走運動の拡大を期待して行います。腱滑走運動は関節可動域の拡大を図ってから行うようにします。

 提示する自主トレメニューは数が少なく単純であることに心掛けております。高齢の方には「明日まで宿題としてこれだけやってきて下さい」と、一つか二つの運動を指導します。
宿題が多すぎたり、内容が複雑すぎたりすると不十分となりますので、セラピストの目線でなく患者目線で運動内容を吟味する必要があります。

 はじめのうちは機能障害に対する運動指導とADLでの使用制限が中心ですが、術後の経過日数や修復組織の治癒状態、機能障害の改善状態から、筋力強化やADLでの使用時の負荷量の増加へと内容は変化します。

 私が特に繰り返して注意することは、安易な温熱療法、冷却の軽視、繰り返される自動運動です。

 冷却を要する方が43℃のお風呂で入浴していては冷却効果が得られません。逆に血管が拡張して腫脹が増悪してしまいます。お風呂の湯加減にも気を配る必要があります。

 また、冷水での冷却を推奨しておりますが10分間洗面器で冷やすことがなかなか出来なく、水道水で数分冷やした、忙しくて時々しかできなかったとなっている方がおられます。しっかりと冷却の重要性を伝える必要があります。

 私のブログを訪問している方には分かると思いますが、私は腱鞘炎を強調しているセラピストです。身近な疾患でありながら最悪Stiff handになり、CRPSとの診断がつく例も経験しております。

 時々、強迫観念のように手指を屈伸している方を居られますが、正しい知識を提供する必要があります。しかし、セラピストにも腱鞘炎やStiff handに対する理解が出来ていない方もおられます。セミナーでは警笛の如く「腱鞘炎」、「アイシング」、「繰り返される屈伸はさせない」と繰り返してきました。

 自主トレは、患者が自分の手を理解して取り扱えられるように指導し、するべき運動としてはならない運動を理解し実行できるようにする過程だと思います。
 してもらうセラピィも大切ですが、するセラピィがもっと大切だと思います。
2015. 04. 09  
 ある男性の愁訴が「手が見えません」でした。

 視覚障害はありません。

 どのように見えないのかと尋ねると、「Yシャツのボタンを下からはめるのですが、首元になるとボタンを目で見ることができないのではめることができなくなる」、「以前は目で見なくとも手で見ていたからできた」とのことでした。
 つまり、指先の感覚がないということのようでした。

 両手の短母指外転筋の著明な筋萎縮を認め手根管症候群が疑われました。
 チネルサイン陰性、ファーレンテスト陰性、神経幹圧迫検査陰性と、手根管症候群の誘発検査は全て陰性を示しました。重度な障害を示唆します。

 神経伝導速度検査では、SNAPは両側の示指で導出不能。CMAPは右側の短母指外転筋、第2虫様筋で導出不能。左側では短母指外転筋で導出不能。唯一、第2虫様筋から潜時が延長し低振幅の波形がわずかに導出されました。

 SW-Tでは、右手の母指・示指・中指で6.65が感知できない状態で、左手は6.65が感知できる状態でした。

 重度な手根管症候群では、母指対立障害による“つまみの構え”の障害とつまみに参加する指(母指と母指に対抗する示指・中指)の感覚障害により、著しいつまみ動作の障害と呈します。

 これまで多くの手根管症候群の方の評価をしてきましたが、「手が見えない」と表現された方は初めてです。しかし、生活における手では確かに手で物を見ていますので端的な表現なのかもしれません。

 バックの中を探る動作、ポケットから10円玉と100円玉を識別して取り出す動作、釘袋から目的のサイズの釘を取り出す動作、暗闇でスイッチを探す動作、車を運転しながら飴玉を取り出すなど、視覚的な情報が得られない場合には手指の感覚による代行機能が求められます。

 我々セラピストも、誘発検査で陽性だとか陰性だとか、SW-Tではどのフィラメントが感知できたとか出来ないとかというより、運動神経由来の“つまみの構え”と感覚神経由来の“ものの見方”を質的に評価する必要があるものと考えさせられました。
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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