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2017. 02. 12  
 セラピィを施す中でとても大切なことは、患者自身がどのような病態にあり、どのように自分の障害手を取り扱うべきかを理解することです。そのためにはセラピスは、「自分が患者を治す。治してやる。」というようなセラピスト主導であってはならず、自己管理方法や自主トレの方法の指導に時間を費やす必要があります。
 
 病態によっては1・2回の治療で症状が緩解することもありますが、半年から年単位を要することもあり、または、セラピィに抵抗を示すため最終的に観血的治療を選択されることもあります。

 私は治療をある意味で“拘束”だと思っています。
 週1回1時間の治療でも患者さんの1週間のスケジュールに半ば強引に入り込みます。来院するためには移動時間や前もっての夕飯の支度、通院手段の確保、仕事の割り振りなど治療とは別の解決しなければならない事柄も多くあります。
 そのような事情があることを医療従事者は想像すべきです。想像することによりセラピィの効果を高めるためにどうすべきか考えるものです。そうすると今回のテーマに立ち返ることになります。
 病態によっては長期間を要することもあり、これらをやり繰りすることは容易なことではありません。ですから、この拘束から患者さんを開放しなければなりません。しかも、治療効果を得ながらにして。的確な自主トレが出来れば通院頻度は少なく済みます。

 セラピストは患者が来院しなければ目的は果たせません。しかし、必要な回数の通院が可能な患者は決して多くはありません。労災や自賠の患者では比較的通院は容易ですが健保では仕事が優先されるため難しくなってしまいます。

 遠方のため通院手段がない、仕事が休めない、介護を必要とする家族がいるからなど、通院困難な理由はたくさんあります。
 しかし、患者側の理由ばかりではありません。セラピスト側の理由もあります。総合病院では単価の高い脳血管障害の予約枠を広げている施設が多いため、手外科の運動器リハの患者は予約が入りにくい、または限定的な回数となっているようです。手外科医から処方が出ても月に数回のリハビリでは術後の合併症は予防どころか有効なリハビリさえ受けられないこともあるのではないかと危惧致します。

 患者が通院して来ないから、予約が採れないからという理由で、拘縮手になっても許されるものではありません。
 
 「退院したら一人では通院できないから、主人か娘に仕事を休んでもらい車で送ってもらわなければならない。」
 「主人が高齢のため免許を返納した。便が悪い所に住んでいるからタクシーで通います。往復で5千円位。」
 手を治すのも容易ではありませんが、通院もまた大変です。

 問題解決は入院中の自己管理や自主トレの徹底指導だと考えます。
 自己管理法に加えリスクの管理もお伝えすべきです。
 併せて、必要なスプリントを作製します。患者によっては複数のスプリントを要しますので、どの時期にどのようなデザインのスプリントを作製するかを検討します。

 “治してもらう”から“一緒に治す”、主役は患者さんです。セラピストが血気盛んに治すものではないものと思います。
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2017. 01. 09  
 神経損傷についてわかりやすくまとめて頂いていて大変助かっております。1点わからないところがありましたので、教えてください。

 最後の下線部に

 つまり、受傷直後であれば応答収縮を認める可能性がありNeurotmesisと判定してしまいますので、必要あれば10日後に再度検査する必要があります

とありますが、受傷直後に応答収縮が認められる場合はNeurotmesisでは無く、Neurapraxiaという理解で正しいでしょうか?

お忙しいところ恐縮ですがよろしくお願いいたします。




 ご質問ありがとうございます。
 2010年12月10日のブログ記事ですね。

 NeurotmesisとAxonotmesisは軸索断裂、Neurapraxiaは脱髄です。軸索断裂では断裂部位(損傷部)より末梢でWaller変性が生じます。このWaller変性は断裂直後にぱっと変性するものではなく10日前後の時間を費やし変性すると報告されています。 つまり、軸索障害直後はNeurapraxiaと同じように応答収縮が生じます。
 NeurapraxiaでもNeurotmesisでも受傷直後は受傷部より遠位部では支配筋の応答収縮が認められます。時間の経過によりWaller変性が完成し応答収縮が認められなくなるのがNeurotmesisです。


 ある前骨間神経障害例です。
 発症翌日に受診されました。長母指屈筋、示指の深指屈筋のMMTが「0」でしたが、長母指屈筋と方形回内筋の複合筋活動電位は導出されました。しかし、2週後には複合筋活動電位の振幅幅が低下しており、伝導ブロックと軸索障害が合併した状態と判定できました。
 この2週間にWaller変性が生じ振幅幅が低下し、軸索再生には時間を要するだろうと推測できます。


 もう少し説明をすると、
 以前に読んだ文献でマッチ棒の太さの神経幹内には1000本の軸索があるとのことです。出所が不明ですので参考までにしておいて下さい。
 この1000本の軸索が全て断裂し変性するとは限りません。混在する不全麻痺もあります。
 ちなみにNeurapraxia、Axonotmesis、Neurotmesisは、軸索1本の状態を示しておりますので1本の神経幹を指しているものではありません。

 神経幹伝導検査は応答収縮を視診するので客観的な数値は出せませんが、複合筋活動電位を導出できない環境にいるセラピストにとっては力強いツールの一つです。
2017. 01. 06  
 昨年は、症状(symptom)と徴候(sign)を意識した年でもありました。

 症状は患者側からの訴えであり主観的な内容で、徴候は医療従事者が患者の心身から得られる客観的な事象です。ですから、私たち医療従事者は症状に関しては患者の訴えに頼らざるを得ませんので傾聴する姿勢が大切であるということになります。
 徴候は刺激に対する反応です。陽性とか陰性とか、健側と比べてどうなのかを観るものです。徴候は患者が発する情報です。せっかく情報を発していながら情報収集側に知識がないだけに、興味がないだけに見逃してしまうことがありますので、一つでも多くの徴候を収集する努力が求められます。


 患者の訴えを徴候で確認する。


 しびれを訴える例では、そのしびれが何を意味しているのかを確認する必要があります。患者と医療従事者間での認識の共有です。しびれは必ずしも患者と医療従事者間で一致している症状とは限りません。しびれの多くは末梢神経障害由来の症状ですので、その症状を支持する徴候を見つけ出さなければなりません。

 母指・示指・中指のしびれであれば、チネルサインで部位を特定していきます。その他の徴候、ここでは誘発検査ですが、Phalenテストや神経幹圧迫検査などで手根管症候群(CTS)の徴候の有無、perfect “O” ringで長母指屈筋と示指の深指屈筋、短母指外転筋の筋力低下の有無を確認します。

 出来れば客観的な数値として神経伝導速度検査を行っておく必要があります。治療前後での効果判定するためにも客観的な数値は必要です。
 握力やピンチ力、VASなどの数値で表せるものは測定しておくべきです。


 交通事故による外傷性胸郭出口症候群(TTOS)例で四肢のしびれを訴える方がおります。そのような例に対して坐骨神経に緊張を加えると斜角筋の緊張感と上肢のしびれが増悪することがあります。これも一つの徴候だと考え重要視しております。刺激に対する反応。誘発で陽性ですので、そこには陽性となる理由があるのです。
 末梢神経は基本的に深部組織に固定されない滑走性を備えた組織です。坐骨神経を介して脊髄を尾側方向に牽引すると腕神経叢は椎間孔に引き込まれるように近位方向に滑走させられます。腕神経叢が斜角筋により絞扼されていると腕神経叢の緊張が増すために症状が誘発されます。


 手の浮腫と腫脹、熱感、こわばり、痛み、可動域制限を認めるStiff hand。
 腱鞘炎由来のStiff handですがCRPSと診断されることもあります。CRPSを除外するためにも腱鞘炎の徴候を探し出さなくてはなりません。腫脹と熱感、関節可動域の制限、A1プーリーの圧痛、MP関節の過伸展制限、腱通過障害。
 CRPSは稀な疾患であるため対応が遅れる場合があります。痛みのコントロールが容易でない例では過剰反応と指摘されるかもしれませんが、まずはCRPS疑いで扱わなければなりません。
 腱鞘炎由来のStiff handは医療従事者が意識さえしていれば容易に診断することができます。外傷性でも非外傷性でも生じます。 

 橈骨遠位端骨折後の症例で何となく手がこわばって、腫れぼったくて、熱っぽい手の方はおりませんか?それが腱鞘炎由来のStiff handなのです。

今年は脊椎疾患関連の徴候を学び、TTOSに合併する下肢のしびれの病態を解き明かせたいと考えております。

今年もよろしくお願いします。
2016. 12. 19  
 手根管症候群(CTS)をセラピストの立場から診ると腱鞘炎のコントロールと正中神経の滑走の拡大が基本となります。

 “CTSに合併するばね指”的な報告は多々あり発症頻度は3割程度のようです。しかし、ばね指は腱鞘炎の病期の一過程にすぎず、ばね指が生ずる前の初期の段階から通過障害による関節拘縮の末期までを含めるとCTSの6から7割は腱鞘炎を合併するものと思います。自験例では55~64%での合併でした。

 手根管内の滑膜の腫脹により手根管内圧が高まって正中神経を絞扼するならば、内圧を下げて絞扼を解除すればいいのです。では、非観血的な立場のセラピィで何ができるのか?

 運動療法とスプリント療法、物理療法を駆使して絞扼解除する方法を考えなければなりません。

 腱鞘炎を鎮静化するためには安静が不可欠ですが日中の固定は拒否されてしまいます。夜間固定しか望めません。また、就寝時の手指は屈曲位をとりますので示指と中指の屈筋腱が正中神経に接近し加圧してしまいますので指は伸展位とした方がいいのだろうと考えました。手指を伸展固定することはA1プーリーも減張を図れますので一石二鳥となります。そういうことで夜間固定用のスプリントは手関節中間位、手指伸展位固定としました。想定通り効果的です。

 次に、腫脹と熱感に対するアイシングです。炎症により拡張してしまった血管を冷やすことで縮小させなければなりません。浮腫と熱感が改善してくるとこわばり感も改善してきます。
 理解されているようで理解されていない点ですが、炎症部への温熱療法は禁忌であるということです。日本人は温泉に関しては手放しで受け入れてしまう国民性です。調子が悪いと温泉または熱めのお風呂と考える方が多いようです。医療従事者の中でも、「取り敢えず温めましょう」的な方が多いようです。卒然教育で学習済みのはずですが・・・。
 私の日常臨床では温熱療法としての加熱よりもアイシングの使用頻度がけた違いに多く、手外科領域の手は炎症状態への配慮が必要であると思います。

 浮腫に関しては短時間でも高挙手での手指屈伸運動を行う必要があります。正中神経の神経滑走運動でいつも以上に症状が誘発されていた方に、5分間の高挙手後、再度正中神経の滑走運動を施行したところ症状は誘発されませんでした。浮腫の可及的な除去が必要であるということを痛感させられました。


 私が提唱した腱鞘炎の病期分類では、腱がどのように腱鞘を通過するかで分類しております。クリック、弾発現象(ばね指)、通過障害、拘縮などで、ここでは痛みやこわばりの有無は考慮しておりません。ここでいう腱鞘はA1プーリーでMP関節掌側にある掌側板に付着しております。腱鞘炎例の多くはMP関節の過伸展が制限されるという事実はご理解できますか?炎症により腱鞘は拘縮に陥り、その結果、掌側板の伸張が妨げられMP関節の伸展が制限されると考えられます。ですから、腱鞘のストレッチにはMP関節の過伸展が必要となります。
 手根管内の滑膜の腫脹では屈筋腱の滑走制限が生じます。手指の屈伸制限の原因となることがあるため腱滑走の運動の拡大を図る必要があります。
 このようにして滑膜の浮腫が改善すれば手根管内の内圧が軽減し正中神経の除圧が図れます。

 絞扼性神経障害を診ていく上でもう一つ改善しなければならないものが神経の滑走です。絞扼されてきた神経は癒着し滑走が制限されています。神経の滑走が制限されていると関節運動により容易に神経に緊張がかかり症状が誘発されてしまいます。神経は関節の運動により緊張が増すと緊張勾配を均一化しようと緊張部位へ向かって滑走するという特徴を利用し滑走の拡大を図ります。

 CTSでも他の絞扼性神経障害同様にセラピィの適応を考慮しなければなりません。手術絶対適応なのにセラピィを行っても効果はありませんし、逆に病期を進行させてしまう可能性もあります。セラピィの適応の裏には手術適応がありますが、施設ごとの適応があり統一した見解がありません。

 手術を選択した例では、「CTS(正中神経障害)」+「腱鞘炎」+「手術の合併症」と手術の合併症が加算されます。後療法は術前の機能障害と術後の合併症対策であり、セラピストは問題内容を想定して早期に介入しなければなりません。CTSの後療法では、術前の腱鞘炎、滑膜の腫脹と、術後の浮腫と腫脹、神経と腱の滑走制限または滑走制限の可能性、ROM制限または制限の可能性を想定して早期に対応する必要があります。早期対応の理由は予防が最善の対策だからです。そのためには早期介入のリスクを把握しておく必要があります。
2016. 12. 13  
 手根管症候群のop後の患者さんについて教えてください。

 手根管症候群で確か3年くらい前から母指~中指にかけて痺れがあり、先生から勧められて手術をしました。
 術後痺れからこわばりに変わり、母指~小指に拡大、表在感覚はありますが深部感覚鈍麻。
 最近はこわばりは強くなり痛みもあると言います。
 本人の話では術前は痺れのみでADLに何の問題もなかったが、術後は箸を持つとか何かをつまむ、蓋を開ける、下着のホックをつけるなどいろいろな巧緻動作ができなくなってます。
 特に右手の対立運動や、虫様筋が弱化しててMMT2レベルです。左は4くらいあります。

 先生は、術前も深部感覚や対立は弱くて術後悪くなってるとゆうより変わってない、とは言ってます。
 ただ手術の記録では右の正中神経はかなり細くなってた的なこと書いてます。

 このこわ張りは今後治ってきますか?



 ご質問ありがとうございます。

 手根管症候群(CTS)に対して手根管開放術を施行し、術後にこわばりが生じてしまったという症例のようです。
 
 このこわばり感は腱鞘炎によるものと解釈できます。CTSに腱鞘炎が合併するという報告は多々あり、自験例ではCTSに6割に合併しておりました。
 また、術後の合併症として浮腫や腫脹を呈している手で自動運動を繰り返して行うと腱鞘炎を発症ないし増悪させますので、他動運動によるROMの拡大を図るべきです。

 手術前から発症していた腱鞘炎なのか、手術の合併症として結果的に生じてしまった腱鞘炎なのかは分かりませんが、腱鞘炎を鎮静化していかないと、腱鞘炎由来のStiff hand(硬い手)となり、不可逆的な拘縮手となりますので注意して下さい。

 腱鞘炎が沈静化するとこわばり感も消失します。腱鞘炎には繰り返される自動運動と温熱療法は禁忌ですので注意して下さい。

 浮腫に対しては高挙手、腫脹や熱感に対してはアイシング、ROM制限は愛護的に他動運動で徐々に拡大して下さい。運動による痛みの誘発には十分に注意を払って下さい。恐らく手指屈筋腱の滑走の制限が生じていると思いますので滑走の拡大も図るようにして下さい。

 正中神経に対しては神経滑走運動により滑走の拡大を図って下さい。

 最後に、「こわばりは今後治ってきますか?」とありますが、治療者が治るように誘導しなければ治るものも治りません。病態に即したプログラムを立案して下さい。
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プロフィール

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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