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2018. 10. 01  
 こんばんは、お久しぶりです。先生にお聞きしたいことがありまして、連絡させていただきました。

 リウマチで中指、環指、小指伸筋腱の皮下断裂の患者さんです。
 前医で手指の伸展機能再建目的に長掌筋腱移植をしていましたが、再断裂した後に当院を受診されました。

 当院では、腱移行による手術をしています。FCRを骨間膜を通して、遠位に残存している伸筋腱までのギャップには、長趾伸筋(FDL)を移植し、手関節を跨いでEDC、EDMに腱移行を施行しております。術後2日目から早期運動を開始しています。術中所見では移行腱を引っ張ってMP関節の伸展はー20度くらいでした。

 MP関節を自動伸展させたい時の、手関節の肢位のことです。
 tenodesis effect用いることでMP関節を伸展できますが、自動伸展を手関節掌屈位で行うと、flexorやintrinsicに力が入ることでMPが屈曲位になります。試しに手関節を軽度背屈位にしてMP伸展を命じると、掌屈位と比較して10度以上は伸展しました。

 腱移行後の筋の走行をイメージすると、FCRの起始からEDCへ向かいますので、背屈位の方が直線的に作用しそうなイメージがあります。手関節の肢位をどちらで手指を伸展させる方が良いか、先生のご意見をくださると嬉しいです。お忙しいところ失礼いたしました。




 お元気そうで何よりです。セミナー開催では大変お世話になりました。
 学会に参加されておりますか?今度、学会に来られましたら声をお掛け下さい。

 ご相談ありがとうございます。

 この術式は、手関節屈筋のFCRをEDに縫合しているので、腱固定効果で手関節を掌屈するとMP関節は伸展します。
 私たちは何気なく指を伸展する際に手関節は掌屈します。指伸展時に手根屈筋が働くわけですから、手根屈筋とEDは指伸展時には共同筋となります。この手根屈筋の一つのFCRをEDの力源にするとスイッチングが容易です。

 今回の症例では弱めの緊張に思われます。緊張が弱いのでMP関節は伸展不全となり、努力性に指を伸展しようとして内在筋が強く緊張しIP関節が伸展となっているように思われます。
 努力性にMP関節を自動伸展させようとはせず、手関節の自動掌屈で指が伸展することを習得して貰い、徐々に手関節の伸展を上げていくようにした方がよろしいかと思います。

 手関節に可動域制限がある例では、腱固定効果を期待するよりは自動掌屈によるFDR→ED→MP関節伸展を獲得するために縫合腱の滑走はとても重要となります。
 内在筋拘縮はないでしょうね。内在筋拘縮があるとMP関節は伸展制限が生じます。


 ご質問の指伸展時の手関節の角度ですが、腱の癒着を回避するためのも腱縫合部の滑走が生じやすい肢位を考える必要があります。
 手関節の掌屈と指伸展の腱固定効果のみでの腱滑走では癒着は避けきれません。手関節を背屈位にしていく必要がありますが恐らく指の伸展不全となると思います。
 セラピストが手関節を背屈位で固定した状態で手関節を自動掌屈するように指示します。FCRの緊張により腱縫合部は中枢に滑走しMP関節は伸展します。
 漠然と背屈したままMP関節を伸展して下さいとしてもスイッチングされていなければ腱縫合部は滑走されないものと思います。

 この症例では、伸展不全があるので移植腱は長いのだと思います。そうしますと、手関節背屈位では腱は緩んだままであり、腱縫合部は滑走しないと思います。
 腱の滑走を出すためには腱床を延長する必要があります。手関節の掌屈位ですね。手関節掌屈位のまま自動的に掌屈させてMP関節が伸展すれば腱縫合部は滑走しているということになります。
 ご理解頂けたでしょうか?
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2018. 09. 20  
訪問者(作業療法士 Tさん)への返信
件名:ご相談
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はじめまして、大阪府で作業療法士をしておりますTと申します。
いつも参考にさせていただきます。今回、ご相談に関してどのようにすれば良いのか分からずここへ書いてしまいました。急であり失礼かもしれませんがよろしくお願いします。

示指屈筋腱断裂修復後に癒着を起こし、腱剥離術を実施した事例です。剥離後の訓練は初めてなので色々と調べたんですが、なかなか文献見つからず相談させていただきます。腱剥離後は出血をしてでも滑走性の獲得と可動域の獲得が必要だと伺った事がありますが、滑走訓練時の出血に限っては気にしなくて良いという事でしょうか。
PIPに伸展制限があるのですが、その他動可動域訓練時や示指の他動伸張時の出血は良いのでしょうか。また疼痛に関しては軽い痛みで止めておいた方が良いでしょうか。
30代男性 断裂zone? 剥離術後4日目
DIP自動屈曲30°(PIP固定)
PIP自動屈曲60°伸展-20°
MP関節は制限ありません
現在は先輩OTにより実施されていますが、泣くほどの痛みと多少の出血を伴いながら行なっております。患者様は協力的ですが継続して良いかどうか分からず、、Drにもお話を聞く予定ではありますが、手の外科専門では無いのでお時間ありましたらよろしくお願いします。




 ご質問ありがとうございます。
 腱剥離後のリハビリは、獲得した腱滑走の維持と腱性拘縮が解除されますので屈筋腱であれば他動伸展の獲得が求められます。
 腱剥離のリハビリは準備から始めます。可及的な関節可動域の拡大と浮腫や腫脹の除去です。
 そして、手術見学では、縫合腱の状態、温存された腱鞘、深指屈筋腱と浅指屈筋腱の癒着状態、剥離後の腱滑走状態、止血操作などを確認しておきます。
 腱剥離が不十分であることもありますので、自動屈曲や他動伸展での腱の滑走状態をきちっと目視するようにします。

 術後の出血と疼痛に関してのご質問ですね。
 腱剥離術後でも腱縫合術後でも、早期のセラピィでは出血はやむを得ません。事前に患者に説明しておく必要はあります。数日中には止血されるのが一般的です。
 ただし、皮膚離開を認めましたら医師にすぐに報告して下さい。感染にも要注意です。

 痛みに関しては、泣くほどの痛みはやりすぎだと思います。腫脹の原因となり関節の可動域制限になりますし、CRPSへの移行にも注意すべきです。
 でも、何が痛いのでしょうか?他動運動でしょうか?腱滑走でしょうか?
 痛み対策としては、坐薬をリハビリの1時間前くらいに使用してもらうと痛みが緩和します。

 提示された自動可動域は屈曲不全でしょうか?
 MP関節には可動域制限がないので腱鞘炎による通過障害はありえませんか?
 通過障害による屈曲不全というケースもあります。
 屈曲不全(自動屈曲制限)なのか、屈曲制限(他動屈曲制限)なのか、どちらなのでしょうか?

 疑問にもつことは大切ですが、色々な情報から推測することの方が臨床家としては大切です。
 もう少し情報が欲しいですね。
2018. 09. 09  
 手根管症候群の手(CTS hand)とは、手根管症候群の症状を呈している手ではなく、手根管症候群に腱鞘炎も合併している手をさします。このCTS handは私の造語です。
 このCTS handとすることによりセラピストが腱鞘炎に対して注意を注いでくれることを切に望みます。

 手根管症候群は絞扼性神経障害の一つで、正中神経障害の代表的な疾患です。
 当然ながら正中神経の障害ですので評価項目は正中神経障害となり、治療も正中神経機能の回復となります。

 しかしながら、手根管症候群には腱鞘炎が高率に合併しますので、患者さんは手根管症候群と腱鞘炎を区別することなく手の不調を訴えてきます。そのため保存療法では手根管症候群の除圧と腱鞘炎の鎮静化を図る必要があります。

 患者さんの訴えられる自覚症状は、
 正中神経系では、母指から環指のしびれ、感覚の鈍さ、つまみにくさ、就寝時の痛み。
 腱鞘炎系では、手のこわばり感、手掌の違和感、痛み、指の関節が硬い、ばね指、腫れぼったいなど。

 このような症状が混在した手を敢えてCTS handとし、取りこぼしがないように対応することが望まれます。
 今後、手根管症候群の診断名の患者を診る際には、このCTS handを思い出し腱鞘炎の評価と治療を追加するようにして下さい。

 ちなみに、数人の手根管症候群との診断がなされていない腱鞘炎由来のstiff hand(拘縮手)例の正中神経から短母指外転筋の複合筋活動電位を導出すると終末潜時の延長を認めます。
 どういうことを意味しているのでしょう。お分かりいただけたでしょうか?
2018. 06. 29  
件名:自転車による腱鞘炎?
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 以前、スノーボードでの打撲によるTFCC損傷疑いでご相談させていただきました、静岡県の無床整形外科診療所勤務の理学療法士です。
 テーピング固定にて無事痛み・クリック音ともに消失しました。加療にあたり、阿部先生の返信が心強かったです。ありがとうございました。

 今回、運動不足で自転車に乗り始めた症例2例に手掌の痛み、MP関節付近、A1プーリー?あったので、対処法など経験あればご教授いただきたくメールしました。
 1例は自分自身のことで、自転車通勤をはじめて数か月で手掌MPあたりの痛みを自覚、圧痛やon handでsharp painあり、握り動作は痛くなく、特別にADLに支障ない状態です。
 当初は普段の使い過ぎかと思い、腱鞘炎の対処としてMP関節のストレッチを実施したのですが、伸展ROMが健側の左よりもいい状態だったので、このまま更にROMが健側より拡大してもいいのか確信なく、アイシングのみ行い軽快しました。
 その後2回ほど痛みを自覚することありましたが、アイシングや自転車でハンドル握りすぎないよう気を付け、姿勢を意識するなどし、痛みが消失していました。
 今回、別の方で自転車をはじめたところMP関節に腫れ・圧痛・バネ指現象を生じた方がおり、とりあえずアイシングを行っていただきました。

自 転車運動をはじめて、手掌の痛みを生じる方というのは多いのでしょうか?自分が経験するまで考えもしませんでした。
 お忙しい中で申し訳ありませんが、経験などあればご教授いただければ幸いです。




 ご質問ありがとうございます。
 腱鞘炎を疑ってよろしいと思います。

 腱鞘炎は繰り返される屈伸運動だけで発症するものではありません。
 A1プーリーの外側(腱と接触する面を内側とすると)に変性を認めるとの論文があることから、腱からの機械的刺激だけではなく、手掌に加わる圧迫で発症する例もあると思います。

 私事で恐縮します。
 息子が軟式野球していることから私もチームのコーチをしており、時々、ピッチャーの投球練習に付き合うことがあります。キャッチャーミットを使わずマイグローブで捕球した後は、A1プーリーの圧痛、熱感、こわばり感が生じてしまいアイシングと腱鞘のストレッチ、超音波を施行し落ち着かせました。腱鞘炎ですね。
 手掌部分への繰り返される“圧”が原因となっていたようです。

 K.T.さんの話に戻ります。
 自転車はどのようなタイプのものでしょうか?
 前傾姿勢で乗車するスポーツタイプですと手掌部分で荷重することになります。

 3.11の震災以降、一時期、片道30㎞の道のりをマウンテンバイクで通勤していたことがありました。スピードを出すためにスタンドを高めにしていたので前傾が強調されておりました。当然、手掌荷重となり手のこわばりが生じてしまい、高挙手、アイシング、A1プーリーのストレッチで対応しました。

 MP関節の過伸展についてですが、慢性的な腱鞘炎では腱鞘の拘縮によりMP関節の過伸展が制限されますが、急性発症では拘縮は生じないものと思います。

 一度、腱鞘炎を発症した方は再発する。または、他の指にも発症しやすいとの報告があります。
 腱鞘炎になった方は再発防止のメンテナンスを継続することを勧めます。

 残念ながら、未だに腱鞘炎由来の拘縮手を診ます。
 臨床場面で腱鞘炎ありきで診て頂きたいと願います。
2018. 06. 02  
 近医で腱鞘炎の切開手術を10年位前に行ないました。昨年重たい物を両手で長距離運んでいたら、手術した中指が第一関節から手の平に腱が浮いて屈曲できなくなりました。


 ご訪問、ありがとうございます。
 特に相談ということで頂いたメールではないのですが、A1プーリーの切開でこのようなリスクがあるのかと想定外の内容に驚かされております。
 

 腱鞘炎での切開手術では、一般的には手のひらにあるA1プーリーという靭帯性腱鞘を切開します。腫れて内腔が狭くなっているA1プーリーが切開されますので、A1プーリーの中を滑走する指屈筋腱はストレスなく滑走することが可能となります。

 靭帯性腱鞘はA1、A2、A3、A4プーリーと4つあります。
 Y.A.さんの文面からは、腱鞘炎でA1プーリーを切開しておりますのでA2からA4は温存されているはずです。
 第一関節から手の平に腱が浮いてきているということから、A2からA4プーリーが破綻してしまったように思われますが、可能性としてはA2プーリーだけの破綻の可能性が高いように思います。重い物を長距離運んでのことですので、大きな力が持続的に加わっての損傷ということになるでしょうか。

 プーリーはA2とA4がとても重要と言われております。
 A2プーリーの再建だけで握れるようになるように思います。
 重いものを長距離運ぶだけの体力がある方ですので、かなりの活動的な方と推測します。であれば、不自由なままで過ごすよりは、治せるものは治した方がよろしいかと思います。
 手外科医を受診されては如何でしょうか?
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プロフィール

阿部幸一郎

Author:阿部幸一郎
作業療法士、認定ハンドセラピスト

 日常の臨床で手のリハビリに携わるセラピストを応援し、自分自身も切磋琢磨することを目的に、2011年7月にこのHAND maintenance studioを発足致しました。
 特に、指導者がいないセラピスト、数少ない手外科の患者をどのように診ていいのか迷うセラピスト、総合病院で手外科に専念できないが興味があるセラピストなどを応援します。
 そのため定期的な手のリハビリテーション(ハンドセラピィ)に関するセミナーを企画開催しております。
 また、手のことでお悩みがある方に対しては相談や運動指導を直接行っております。
 ご遠慮なく、訪問して下さい。

Twitter:@hand_abe(フォローをお待ちしております)

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